研究課題/領域番号 |
22H01361
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
琵琶 志朗 京都大学, 工学研究科, 教授 (90273466)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 超音波 / 非破壊評価 / 閉口欠陥 / ラム波 |
研究実績の概要 |
本研究では閉口欠陥の界面非線形性によるラム波(平板を伝わる超音波)の周波数ミキシング(異なる周波数の超音波を入射した際の和・差周波数成分の発生)の機構と特徴について実験および理論・数値解析により明らかにすることを目的としている。今年度の研究による主な成果は以下の通りである。 (1)界面非線形性によるラム波の周波数ミキシングを解明するための基礎的検討としてバルク波(縦波)の周波数ミキシングに関する実験的検討を行った。具体的には、二個のアルミニウム合金ブロックの接触界面に対して異なる入射方向の組み合わせで縦波バースト波(基本波)を入射し、異なる方向に設置した圧電探触子で測定した散乱波に含まれる和・差周波数成分をスペクトル解析により評価した。この結果、基本波の入射方向の組み合わせに応じて和・差周波数成分が相対的に強く観測される方向が変化することがわかった。和・差周波数成分が強く観測された方向は非線形スプリング界面モデルに基づく理論解析で予想される伝搬方向と良く対応することも確認された。 (2)アルミニウム合金平板に導入した疲労き裂に対向方向からS0モード(最低次対称モード)ラム波を入射したときの散乱波を平板上の多点でレーザドップラー振動計を用いて測定し、時間-周波数解析で得られる和・差周波数成分の到達時間と測定位置の関係から求めた伝搬速度に基づいてラム波モードの同定を行った。この結果、和周波数ではS0モードおよびA0モード(最低次反対称モード)、差周波数ではA0モードのラム波の発生が確認された。また、対向方向から入射するラム波の交差位置を二次元的に走査しながら散乱波を圧電探触子で測定し、和周波数成分のパワー最大値を交差位置の関数として画像化した結果、き裂に対応する位置で大きな値が得られ、ラム波周波数ミキシングに基づくき裂の画像化が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度当初の計画では、界面非線形性によるラム波の周波数ミキシングを解明するための基礎としてバルク波の周波数ミキシングに関する理論的、実験的検討を行うこと、具体的にはこれまで実験的に明らかにしていない伝搬方向・周波数の組み合わせに対して界面非線形性のモデル化に基づく理論解析で和・差周波数成分の伝搬方向を求め、実験結果との対応を確認して理論解析の妥当性を検証することを主な目的として挙げていた。この点については、異なる伝搬方向・周波数の組み合わせでアルミニウム合金ブロックの接触界面に二方向から縦波バースト波を入射し、異なる方向で散乱波を測定した結果、理論解析で予想された伝搬方向で和・差周波数成分が強く観測されることを確認できた。また、ラム波の周波数ミキシングを明らかにするための予備的検討を進めることを当初の計画に挙げていたが、疲労き裂におけるラム波周波数ミキシングで発生した和・差周波数成分のラム波モード同定およびラム波交差位置の二次元走査による疲労き裂の画像化に関して興味深い成果が得られた。以上の状況を考慮して、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の取り組みを計画している。 (1)閉口欠陥の界面非線形性によるラム波の周波数ミキシングについて数値解析による検討を行うため、閉口欠陥を非線形スプリング界面としてモデル化し、二方向から異なる周波数のラム波が入射した場合の非線形散乱挙動を解析するための自作コードの構築を試みる。これにより欠陥の形状や界面剛性の不均質性が周波数ミキシングに与える影響を詳しく調べる。 (2)閉口欠陥の界面接触状態の不均質性を実験的に評価する方法を確立するための試みとして、アレイ探触子によるラム波送受信および疲労き裂の画像化への適用について検討する。また、アレイ探触子のラム波周波数ミキシング計測への適用可能性についても基礎的検討を行う。
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