研究課題/領域番号 |
22H01373
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長藤 圭介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50546231)
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研究分担者 |
伊藤 佑介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90843227)
趙 漠居 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (30825378)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属積層造形 / 高速度観察 / レーザ焼結 / プラズマ / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究では,金属積層造形法のうち金属粉体層にレーザを選択的に照射し溶融・凝固させるPowder Bed Fusion(PBF)法について,超高速でその場観察することでレーザ焼結の現象を解明することである.レーザ照射部において,粉体層が表面から加熱され,溶融,蒸発による反跳圧によりキーホールが形成され,下の焼結済の層に溶融池が到達することで,造形したい平面方向の領域とその下の粉体層と共に溶融,凝固をする.この,加熱・溶融・蒸発・凝固といったミクロで高速な物理現象を解明することは,造形品質,造形速度,粉体利用率の向上につながるレーザパラメータの探索に重要である.特に,キーホール形成時のプルーム発生現象や反跳圧が発生する際の衝撃波の現象を捉えることが重要となる.先行研究に,キーホール形成をX線CTで観察する方法があるが,X線の透過を考慮し観察方向の厚さが実際よりも薄いことが問題であった.また,プルームの発生に関しては,遠くに飛散する観察が主であり,ミクロな観察が行われていない.また,衝撃波の観察を行う例も無い. そこで本研究では,プルームおよび衝撃波を,溶融池全体をとらえる高倍率で観察することを試みる.初年度である2022年度では,衝撃波の観察をトライしたが,真横から観察するための均一な粉体層を形成することが困難で,未だに観察ができていない.プルームに関しても,光学系のセットアップが困難で,観察途中である.次に溶融池まわりの表面の揺らぎの可視化に関しては,当初よりも高い時間分解能(~1 μs)で観察することに成功した.また,表面の揺らぎおよびスパッタが飛ぶ瞬間の画像解析に取り掛かりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,衝撃波の観測,プルームの観測を行う予定であったが,観察のセットアップが予定していたよりも難しく,サンプル作成方法に手間取っている.一方で,メルトプールの観察においては,照射部数 mm角/512pixelの空間分解能,最短数100 nsの時間分解能の観察に成功し,当初予定していた分解能を超える観察を行うことができた.メルトプールの表面の挙動の観察に成功した.さらに,その表面の動きを画像処理によって数値化する画像処理プログラムの作成を行い,分析にとりかかる準備ができている.さらに,より引きの動画から,スパッタの捕捉および位置と速度の定量化にもとりかかっている.以上の進捗から,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
初年度である2022年度では,衝撃波の観察をトライしたが,真横から観察するための均一な粉体層を形成することが困難で,未だに観察ができていない.プルームに関しても,光学系のセットアップが困難で,観察途中である.この課題に対して,粉体を極薄に塗布する方法を開発し,これまで実績のあるバルク表面にレーザ照射した際のプルーム及び衝撃波を観察する予定である. 次に,溶融池まわりの表面の揺らぎの可視化に関しては,当初よりも高い時間分解能(~1 μs)で観察することに成功したが,表面の揺らぎおよびスパッタが飛ぶ瞬間の画像解析を進める.現段階で,照明を後方から行っていることで,表面が光沢を帯びる溶融池において照明の正反射成分の位置が動いているのか,表面そのものが動いているのかの見分けがつかない箇所があるため,散乱光がまんべんなくとらえられるように,照明の照射方法を工夫することで,表面の揺らぎを観察する予定である.また,レーザのパラメータは1種類しか行っていないので,まずは揺らぎの現象の違いについて仮説を立てやすいパワーを変更することで,観察方法および画像処理方法の確からしさを検証する.パワーの次はスキャンスピードを変更し,VED(体積エネルギー密度)を固定したパラメータ変更をすることで,過去の文献,ほかの観察方法とその現象考察と照らし合わせることで,本研究の観察方法および画像解析方法のオリジナリティを見極める予定である. さらに,加速器での観察を予定している.30keVで薄いサンプルの観察は行われているが,今回100keVで厚さ3~5mmといった実際のPBFの状況に近づけた現象を観察予定である.以上のような,多方面からの観察を行うことで,これまでに解明されていない現象を明らかにしていく.
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