研究課題/領域番号 |
22H01377
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
金子 新 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (30347273)
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研究分担者 |
角田 陽 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (60224359)
武田 伊織 法政大学, 理工学部, 助手 (70792266)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トランスファプリント / 光触媒 / 常温接合 / 接着力 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
2022年度の主な研究成果を以下に示す. ①SAM成膜条件の確立:平坦なガラス基板に光触媒となるTiO2をスパッタ成膜したものを準備し,同TiO2表面に親水性アミノシラン系自己組織化単分子膜(SAM)のAHAPSおよびAPTESを作製した.いずれも一般的な浸漬法(溶液からの液相成膜)とともに,技術導入性の高い小型密閉容器内での簡易気相成膜法でも実証した.後者により煩雑なグローブボックス内での作業を大幅に縮小でき,ほぼ大気環境下での成膜が可能になった.主に,成膜時間と成膜温度の影響を調査し,APTESの場合は100℃で1.5時間以上が適切な条件であることを明らかにした. ②離型層となるSAMの分解特性の調査:APTESとAHAPSのSAMに対して,紫外線(UV)照射量が分解性に及ぼす影響を調査した.UV照射後の表面粗さから,APTESに比べてAHAPSの方が分解性が高いことを明らかにした.これまで高分子膜を離型層としていた光触媒援用トランスファプリントに比べると,上記SAMを離型層として採用することで,トランスファプリントのための離型層の分解時間すなわちプロセス時間を1/2以下に短縮できることがわかった. ③常温接合援用トランスファプリントにおける薄膜性状とスタンプ弾性率の影響調査:Au薄膜を対象として常温接合援用トランスファプリントを行った.ウェハ接合の場合に比べて,拡散接合のための表面粗さの条件が比較的緩く,Saで1nm程度まではトランスファプリントできる程度の接合が生じることがわかった.また,その効果はウェハよりも低いスタンプの弾性率に起因しており,より弾性率が低いスタンプの方が転写率を高めることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね申請書の当初計画に沿って研究が進んでおり,ほぼ期待どおりの成果が得られている.本研究の遂行上,必要不可欠な設備として新規購入した成膜装置については,新型コロナの影響による納入時期の遅れが心配されたが,購入先との綿密な事前協議によって予定どおりの納品および使用開始となった.その結果,基礎的な動作チェックの期間も短縮でき,2022年度後半からは研究計画に沿って運用できたことが,順調な研究進捗の背景となっている.一方で,研究を進めてゆく上で,当初想定していたプロセス条件とは異なる条件の影響が大きいことがわかり,調査内容や順番を一部変更したが,研究全体としては軽微な計画変更である.また,2022年度は対面式の学会や国際会議に参加して成果発表を行った.その結果,関連する研究者と質の高い議論ができ,研究の遂行および発展に寄与する重要な知見や助言を得ることができたのは,本研究を遂行する上で大きな駆動力になったと言える.なお,2023年度から研究分担者の加入が見込め,かつ2022年度は研究協力者(大学院生)の貢献が大きかったことから,当初計画よりも人件費・謝金を削減し,一方で計画よりも進捗のあった実験消耗品の購入費を拡充した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の成果を総括した際,トランスファプリントする薄膜の光学的評価の必要性があると判断し,かつ申請者所属機関の新任研究者が当該研究項目に関して高い専門性を有していたことから,2023年度より当該研究者が研究分担者に新たに加入となった.その結果,本研究の組織が拡充し,今後は前年度以上の研究成果が期待できるものとなった.一方で,研究分組織の拡大は組織マネージメントの重要性が高まるため,オンラインツールを拡張した情報交換,対面式でのミーティングの機会を増やし,研究組織内の連携強化を図ってゆく.また,申請者所属機関に効率的な機器運用を目的とした機器共用センターが立ち上がるため,当初は使用困難だった測定装置などの利用が可能となった.必要に応じて同センターの機器を活用して,より効果的かつ効率的に本研究を推進できるようにする.さらに,対面式の学会や国際会議への参加数を増やし,関連分野の最先端の研究情報を収集をより拡充し,同研究情報を本研究のさらなる発展に活用する.
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