研究課題/領域番号 |
22H01389
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村島 基之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70779389)
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研究分担者 |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 油中添加剤 / 摩擦面リアクター / DLC膜 |
研究実績の概要 |
機械潤滑油中に含まれる添加剤は,低摩擦・耐摩耗性に優れる炭素系薄膜(DLC膜:diamond-like carbon)上では低摩擦被膜を形成しないことや異常摩耗を引き起こすことが報告されている.従って,次世代の省エネルギ機械の為には,DLC膜の摩擦・摩耗特性を維持しつつ高機能トライボ被膜の成長を導く革新的な炭素構造の設計が必要である.ここに対して本年度の研究では先ず,大きく異なるDLC炭素構造がそれぞれどのように油中添加剤由来トライボ被膜の成長挙動を示すのかを摩擦試験により明らかにした.その結果,CVD成膜装置により成膜された水素含有DLC膜においては,トライボ被膜の成長が見られないという結果を得た.次に,水素非含有DLC膜においても,その中に窒素原子を含有するDLC膜では窒素非含有のDLC膜よりもトライボ被膜の成長が促進されることが初めて明らかとなった.この実験結果に着目し,異なる窒素イオンビーム量を用いた成膜を実施したが,この試験においてはトライボ被膜の成長の大きな違いは観察されなかった.一方で,炭素の蒸着速度を低下させて成膜したところ,窒素含有量はほとんど変わっていないにも関わらず,トライボ被膜の成長が促進されることが明らかとなった.また,炭素構造を変化させる新しい手法として,成膜されたDLC膜に対して真空中および大気中で加熱する手法が研究期間中に提案された.この提案された手法で熱処理したDLC膜は加熱条件によって,RamanやXPSのピークが異なるため条件の制御により,自由に炭素構造を制御することが可能であることが示された.これらの結果は,DLC炭素構造が摩擦中の添加剤化学反応に与える影響を包括的に解明することを可能とするものであり,来年度以降はこのDLC膜を用いた潤滑油添加剤由来トライボ被膜成長挙動に与える炭素構造の影響を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の序盤における研究では主に,異なる油中添加剤由来トライボ被膜の成長挙動を示すDLC膜構造が探索された.ここでは,PVD成膜装置,FCVA成膜装置,CVD成膜装置など多様な成膜装置を用いることで,大きく炭素構造が異なるDLC膜に対してトライボ被膜の成長がどのように影響を受けるのかを明らかにした.その結果,CVD成膜装置により成膜された水素含有DLC膜においては,トライボ被膜の成長が見られないという結果を得た.次に,水素非含有DLC膜においても,その中に窒素原子を含有するDLC膜では窒素非含有のDLC膜よりもトライボ被膜の成長が促進されることが初めて明らかとなった.この実験結果に着目し,異なる窒素イオンビーム量を用いた成膜を実施したが,この試験においてはトライボ被膜の成長の大きな違いは観察されなかった.一方で,炭素の蒸着速度を低下させて成膜したところ,窒素含有量はほとんど変わっていないにも関わらず,トライボ被膜の成長が促進されることが明らかとなった.また,炭素構造を変化させる新しい手法として,成膜されたDLC膜に対して真空中および大気中で加熱する手法が研究期間中に提案された.この提案された手法で熱処理したDLC膜は加熱条件によって,RamanやXPSのピークが異なるため条件の制御により,自由に炭素構造を制御することが可能であることが示された. 本年度後半に納入されたAFMを用いた高温油中AFM摩擦試験では,すでにDLC膜上へのトライボ被膜の形成に成功している.したがって,本研究は当初予定されていた研究進捗に加え,成膜速度の制御やDLC膜に対する真空加熱/大気加熱という新しい炭素構造の制御手法の考案がなされている.これらの結果は,DLC炭素構造が摩擦中の添加剤化学反応に与える影響を包括的に解明することを可能とするものであり,当初計画以上に研究が進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
既存の摩擦試験では,「トライボ被膜が30~数百nmまで成長してしまう」「低硬度材の場合には摩耗の影響が大きい」ことらからナノ界面トライボ被膜の分析が困難であり,ここが最適炭素構造設計におけるボトルネックであった.来年度は,本年度に納入されたAFMを用いた革新的超微小荷重・局所高面圧摩擦手法を用いることで,DLC膜上への2nm極薄ナノ界面トライボ被膜の形成試験を実施する.このAFM摩擦手法を用いることで従来の摩擦試験が困難であった,軟質なグラフェンシート(GS)や脆性な単結晶ダイヤモンドなどの多様な炭素構造上にナノ界面トライボ被膜を形成する.また,ここにおいては,表面SEM観察,EDSを用いたトライボ被膜の生成量および構成元素組成,XPSを用いた原子結合状態分析などを合わせて実施することで,DLC膜の炭素構造の違いがトライボ被膜の構成にどのような影響を与えるかを明らかにする.
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