研究実績の概要 |
本年度は、生体流動における流体の運動の生理的役割について炙り出し、新たな生体内物質輸送理論を構築するため、共焦点レーザー顕微鏡を用いた高時空間生体流動および生体物質同時分解能計測手法を構築し、ミリ秒・細胞スケールでの生体流動および生体物質同時計測実験を推進した。 主要な研究実績は以下のとおりである。 1. 線虫(C.elegans)腸内における蛍光グルコース包含大腸菌の摂取実験法を開発し、大腸菌捕食後の腸細胞へのグルコース吸収過程について可視化を行った。腸蠕動の頻度・強度の異なるミュータントと野生株を比較したところ、腸蠕動と吸収量に強い力学的相関が得られた。腸におけるグルコース吸収においては、グルコーストランスポーターによる能動的吸収が知られていたが、力学的作用により糖吸収が促進されることを明らかにした。(Yuki Suzuki,et al., Scientific Reports,2022) 2.ヒト歯科治療時における口腔外飛散エアロゾルの可視化計測法を構築し、エアロゾル飛散抑制のための衛生環境実験を行った。歯科用人体模型(マネキン)を用いて、歯切削ドリルによる切削および洗浄・冷却用水流ジェットによって口腔外へと放出されるエアロゾルの可視化計測手法を構築した。歯科治療現場において普及が進んでいる歯科切削チップおよび口腔内・外バキュームの使用条件による飛散抑制条件について臨床的衛生改善方法の提案に至った。(Watanabe,et al, Journal of Prosthodontic Research, 2023)
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