研究課題/領域番号 |
22H01400
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 康隆 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30346192)
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研究分担者 |
Surblys Donatas 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (20812663)
大森 健史 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70467546)
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 分子動力学 / 濡れ / 界面張力 / 非平衡 / 熱流体場 |
研究実績の概要 |
非平衡の濡れを扱うため、固体に対して接触線が運動する系として、1) 定常せん断下にあるメニスカスの系、2) 液滴が壁面上を非定常的に濡れ広がる系、および 3) 壁面の加熱により接触線近傍で定常的に蒸発がおこる系、の3つについて、分子動力学(MD)解析により取り扱った。1)については、前進/後退接触線近傍で発熱/吸熱現象が起こることを見出した。このメカニズムを解明するために、接触線近傍の速度、温度、応力、熱流束という流体力学の方程式系を構成する熱流体の場を分子動力学系から抽出する方法を新たに開発し、この発熱/吸熱が、接触線の近傍を流れる液体の流線に沿って固体から受けるポテンシャルエネルギーが変化することに起因することを突き止めた。この現象はミクロスケール1)、3)と異なり時間平均的を取ることにより熱流体場を抽出することが困難であるが、マクロに等価であるとみなせる液滴衝突のMD系を多数構築し、これらを適切に同期してアンサンブル平均を取ることで、熱流体場を抽出した。また壁面粗さが異なり平衡状態における接触角が同じとなるような壁面と流体の組み合わせを多数構築し、壁面粗さが液滴の衝突現象に与える影響について検討した。さらに、新たな取り組みとして、3)の定常蒸発系を構築した。MD法においては分子の出し入れが困難であり、従来、定常的な蒸発を行うことは困難であったが、同時に凝縮が発生するような系を構築することで、定常系を実現した。今後、この系について熱流体場の抽出を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非平衡の濡れを扱う上で必須となる分子動力学系の構築が順調に進んでおり、またそこでの解析に用いるための方法論として積み上げてきた内容についても整理が順調に進んでいる。これらの内容について、国際招待講演2件、国内招待講演2件を含み、複数の学会において発表したほか、国際学術誌であるECS Transaction誌において1編の発表を行っており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、非平衡の濡れを伴う系の構築が順調に進行しており、また、熱流体場の抽出法も確立できたため、上記1)-3)の系について、解析を進めていく予定である。とくに壁面粗さが異なり平衡状態における接触角が同じとなる系は、マクロの流体力学では同一とみなされるにもかかわらず、ミクロでは異なる現象を示すことから、この点について着目しながら1)-3)の系での解析を進める予定である。
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