研究課題/領域番号 |
22H01414
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
齋木 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60550499)
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研究分担者 |
杵淵 郁也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30456165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 燃焼 / プラズマ / ラジカル / 表面反応 / 分子線散乱 / 昇温脱離 |
研究実績の概要 |
固体表面上における活性化学種(ラジカル)の反応は,燃焼機器やプラズマ装置など多くの工業機器で見られる熱化学現象であり,機器の性能や製品の品質に強い影響を与えると考えられる.しかしながら,ラジカル表面反応の実験的評価は,ラジカルの化学的不安定性が高いことに起因して極めて難しく,依然として未解明な点が多い.本研究では,拡散速度が速く表面と干渉し易い,原子状の水素・酸素・窒素・炭素などに特に着目し,吸着・会合・脱離から成るこれらラジカルの表面反応素過程を超高真空環境・プラズマ・燃焼診断技術を融合した独自の分析技術により定量・モデリングすることを目的としている. 当該年度は,ラジカルの会合・脱離の評価を可能とするプラズマ昇温脱離分析系の構築に着手した.超高真空中のプラズマにより水素分子,酸素分子,窒素分子などをプラズマ分解することで水素,酸素,窒素ラジカルをターゲット表面に吸着させ,表面を昇温してQMSにより脱離スペクトルを取得し,反応の頻度因子や活性化エネルギーを直接的に求めようとする全く新しい試みである.まず,真空チャンバの設計・製作・導入を行い,10-9 Torr以下の超高真空環境を形成可能であることを確認した.また,これに併行して,壁面近接火炎を対象とした壁面近傍ガス組成計測および詳細素反応機構を考慮した数値シミュレーションを遂行し,大気圧下において異なる材質の表面における水素ラジカル会合・脱離反応速度を見積もることに成功した.今後,上述の昇温脱離計測の比較データとして用いる予定である.さらに,プラズマ分子線散乱装置により,ラジカルの分子線を生成し壁面に照射することで,ラジカル吸着反応の定量化を進めた.各表面における水素および酸素ラジカルの吸着確率が,その温度依存性も含め得られつつある状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,反応性熱流体機器の設計・開発において重要となるラジカル表面反応の素過程を解明・モデリングすることを最終目標としている.そのため,当該年度は,本課題で新たに開発するプラズマ昇温脱離計測装置のための超高真空環境の整備,壁面近接火炎を用いた大気圧下におけるラジカル会合・脱離反応の評価,ラジカル吸着反応を定量化するためのプラズマ分子線散乱実験を遂行することを目的とした.昇温脱離系のための真空チャンバの設計・製作を行い,10-9 Torr以下の超高真空環境を形成した.また,壁面近接火炎によりラジカルと表面が定常的に強く干渉する場を形成し,壁面ごく近傍の水素分子濃度を測定することで,大気圧下における水素ラジカル会合・脱離反応速度の評価とモデル式の提案に成功した.さらに,分子線散乱実験による水素および酸素ラジカルの初期吸着係数の取得も大きな問題なく進んでいる.以上を踏まえると,当該年度の研究は,目的に照らしておおむね順調に進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,プラズマ昇温脱離装置の構築,壁面近接火炎によるラジカル会合・脱離反応の評価,プラズマ分子線散乱実験によるラジカル吸着の定量を進めるとともに,プラズマジェット壁面照射実験による大気圧下におけるラジカル吸着の評価を追加で遂行し,吸着・会合・脱離からなる一連のラジカル表面反応過程の定量化を目指す.まず,昇温脱離系のための表面加熱装置,質量分析器の設置を進め,実質的な測定を開始可能な段階にする.また,これまで,水素および酸素ラジカルを対象とし,石英やアルミナなどの金属酸化物における表面反応の評価を進めてきたが,今後は,カーボンフリー燃料として注目されているアンモニアの燃焼などで重要となる窒素ラジカルにも着目し,工業的に多用されるステンレスやインコネルなどの合金表面での反応の評価を,壁面近接火炎,分子線散乱装置およびプラズマジェットを駆使して進める.
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