研究課題/領域番号 |
22H01427
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
能見 公博 静岡大学, 工学部, 教授 (20325319)
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研究分担者 |
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
MOBEDI MOGHTADA 静岡大学, 工学部, 教授 (80754986)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙テザー / リール機構 / モーター駆動制御 / 宇宙機器熱解析 |
研究実績の概要 |
本年度は、リール機構試作を行った。高精度制御を可能とするリール機構を目的とし、打ち上げ振動・衝撃に耐えること、微小重力環境において柔軟なテザーを高精度に制御できること、熱真空環境において回転体であるリールを安定して駆動させること、を考慮して試作した。 第一にリール軸受けの開発を行った。高精度制御を実現するためには、リール回転機構の軸受けの摩擦低減は必須である。固体潤滑、宇宙用グリス、宇宙用潤滑油などを比較し、またベアリングの機構を考慮して、含侵材に潤滑油を浸透させてテフロンカバーによる飛散防止機構を用いた手法で開発した。第二にレベルワインダーと張力測定機構の開発を行った。テザー巻取が可能なリール機構とするため、リールに平滑して巻き取るためにレベルワインダー(リールと離れた場所でテザーをガイドし、左右に動かすことで、リールに巻き付くテザーを平滑化する)を用いることが必要であり、軌道上微小重力環境(重力傾斜によるテザー張力)とテザー伸展時の張力変化を考慮するとともに、伸展抵抗を最大限抑えることができるテザー張力測定機能を持つレベルワインダーを開発した。第三にモータ制御法の構築を行った。バネ力による伸展初速度への追従、過大張力によるリバウンド回避、装置内でテザーがたるむことの回避、これらを実現する高精度制御が可能となる制御プログラムを開発、さらに前述のリール回転摩擦、レベルワインダーの摩擦を踏まえたアルゴリズムとした。 試作したリール機構について、宇宙機械環境への耐性を評価した。具体的には振動衝撃試験を実施し、試験前後でのリール回転性能を評価した。リール機構として大きな問題は発生しなかったが、組み付け手法になどがリール回転性能に影響することが分かったため、複数方法で試行してリール回転性能を評価、これは次年度に継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、数km~数百kmのテザーを、軌道上外力(数g@1km程度~数百g@100km程度)を利用して制御することを目的とし、「地上では想定されない極限環境(微小重力・熱真空環境)で使用できるテザー伸展回収機構は?」に応える装置を開発することである。さらに、従来の宇宙テザーの研究では、地球方向に重力が勾配することを利用した安定化に焦点があてられているが、軌道運動およびコリオリ力を敢えて利用した伸展回収により、「宇宙空間で自由にテザー伸展方向を操作することは可能か?」について挑戦する。 本年度の計画は、テザー伸展回収(巻取)を可能とするリール機構を試作することであり、試作を完了できた。要求仕様としては、高精度制御を可能とするリール機構、打ち上げ振動・衝撃に耐えること、微小重力環境において柔軟なテザーを高精度に制御できること、熱真空環境において回転体であるリールを安定して駆動させること、であり、これらを満たす設計で製造ができた。さらに試作したリール機構について、振動衝撃試験を実施し、試験前後でのリール回転性能を評価した。 以上から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究全体計画では、高精度制御が可能なリール機構の開発を目的とし、実験的理論的に評価検証していく。さらに軌道上テザー実験からの評価、また微小重力実験および熱真空実験による動作検証を行う。二年目は前年度に試作したリール機構を用いて、宇宙環境に耐えうること、かつ微小重力環境において高精度制御できることを評価検証、高精度制御を実現するモーター機構および制御法の構築、熱真空環境における性能評価、を実施していく。 第一に、シミュレーションによりテザー端にどのような力が作用するかを推定し、リール機構に推定した力を作用させる地上実験を行い、性能を評価する。また、リール機構をモデル化してシミュレーションに取り入れ再度挙動解析を行い、その結果を反映して再度の実験評価を行うことを繰り返し、シミュレーション精度を高めていく。第二に、打ち上げロケットの都合により遅れている超小型衛星による1kmテザー伸展実験は、現在2023年度に実施できる見通しである。この軌道上テザー実験の結果から、シミュレーション同様にテザー端で発生する力を求め、その力をリール機構に作用させる地上実験を行い、性能を評価する。 第三に、宇宙環境実験による評価を行っていく。地上における環境模擬には時間および空間の大きさの制約があるため、初速への追従、張力測定、リール回転制御などの要素ごとに、パラメーターを振って実験することで性能評価を行う。 最終年度には、試作したリール機構について,二年目に評価検証した結果を踏まえ,リール機構の改良を行う.改良したリール機構は,微小重力実験、熱真空実験および機械環境試験による動作および制御法の評価検証を必要に応じて行っていく.
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