研究課題/領域番号 |
22H01428
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
高木 賢太郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60392007)
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研究分担者 |
入澤 寿平 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30737333)
安積 欣志 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (10184136)
奥崎 秀典 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60273033)
新竹 純 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10821746)
西田 豪 日本大学, 工学部, 准教授 (80435669)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高分子アクチュエータ / 高分子センサ / 人工筋肉 / ソフトロボティクス |
研究実績の概要 |
本研究は釣糸人工筋に誘電エラストマなどの刺激応答性高分子材料を組み合わせて複合化し,互いの利点を活かし欠点を補い合うことで,複合化高分子アクチュエータ素子として劇的な性能向上を狙うものである. 2022年度は,まず複合化に先立ち,中心となる釣糸人工筋の作製と特性評価を行った.釣糸人工筋の性能を最大化するための作製条件は未だに明らかにされていないため,荷重やヒートセットの条件を変えて,性能を最大化するための作製条件を実験的に明らかにすることを試みた.その結果,釣糸人工筋の性能指標のひとつであるコイルスプリングインデックス(コイル径と繊維径の比)は撚糸時の荷重だけでほとんど決定されることが明らかとなり,実際の駆動試験においても撚糸時の荷重によって変形量が異なることが確認された.この発見により,釣糸人工筋の作製プロセスにおいて撚糸時の荷重設定が重要であることが明らかとなった.本成果は国内学会にて公表した. 誘電エラストマアクチュエータについては,アクチュエータ素子の線形弾性だけではなく非線形弾性について推定する手法について検討を進め,国内学会にて公表した.さらに,釣糸人工筋と誘電エラストマの複合化について実験的な検討を進め,初期的な成果が得られた.この内容については2023年度に国内学会にて発表を予定している. 他の高分子アクチュエータ材料としてイオン導電性高分子について研究を進め,イオン導電性高分子貴金属複合体センサの支配方程式の厳密解についての手がかりを得た.この成果によって,数値シミュレーションすることなくセンサ特性の本質を明らかにすることが今後期待できる.また,センサの支配方程式は(さらに複雑な)アクチュエータの支配方程式と共通の部分があり,アクチュエータの支配方程式を解く手がかりとなり得るものである.この初期的な成果は国内学会にて公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
釣糸人工筋については,作製条件について順調に研究が進んでおり順調と言える.なお特性評価実験については,より精度と再現性のある特性計測装置を作製する必要があり,特に加熱と温度計測について検討が必要である.加熱方法の違いによって,アクチュエータの実際の温度が異なってしまうためである.また誘電エラストマについては材料研究が必要である. 釣糸人工筋と誘電エラストマとの初期的な複合化の試作ができつつあり,学会発表を予定しているため,順調と言える.誘電エラストマについては特性評価については研究が進みつつある.釣糸人工筋と誘電エラストマとの複合化アクチュエータの特性評価についても初期的な実験ができつつある. 他の高分子アクチュエータ材料(イオン導電性高分子,刺激応答性高分子)については理論的な研究が進んでおり,基本的な成果が今後も期待できる. アーム実機の機構部分については試作する必要があり,機構やサイズを検討するとともに人工筋の取り付け方に関する検討を今後行っていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
釣糸人工筋の作製と特性評価について作製条件について検証を引き続き行う.変形量の計測装置はできているため,発生力の計測装置を完成させる.また,初年度において加熱装置が十分に検討できなかったため,計測装置への加熱装置の追加を行う.さらに,TCPFだけでなく幾何学的に基礎的な形状であり計測が容易なTPFに着目し,TPFの特性評価と物理モデル化を進める.誘電エラストマについては,引き続きエラストマ材料や電極材料の組み合わせについて検証を行う.エラストマ計測装置に関しては,発生力の計測はできてきているため,変形量の計測装置を完成させる.また初年度において,エラストマを電場以外の外部刺激にも応答させる新たな方法の手ごたえが得られたため,検証を行う. 続いて,複合化に関して述べる.釣糸人工筋と誘電エラストマアクチュエータの直列複合化を行い,周波数特性を計測する.そしてアクチュエータ単体と,複合化アクチュエータとの比較を行い,複合化による効果に関して検討,考察する. また,イオン導電性高分子センサの物理モデルに関して厳密解を得る手ごたえが得られているため,シミュレーション検証のためマルチフィジクス有限要素法ソフトを用いる.モデル簡約化についてはさらなる検討が必要であることが初年度わかってきたため,引き続き数式を用いて検討を行う. 最後に,アーム機構部分の製作に関して述べる.アーム実機については,初年度に検討する時間が無かったため,機構部分の設計・サイズを検討するとともに人工筋の取り付け方に関する検討を行う.さまざまな人工筋のテストベットとなるように,サイズや慣性モーメントが可変となるようなものを作製する.
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