研究課題
伝音難聴治療に対して行われる耳小骨再建術では,破壊された耳小骨連鎖を人工的に再建する必要がある.本検討では,従来の術者の経験による再建耳小骨形状の決定に替わり,現状の中耳の状態から最適な形状を形成可能な検索アルゴリズムを検討するとともに,探索された最適形状によって聴力回復が可能であることを実験的に検証する.今年度は,最適な再建形状を提案できる探索アルゴリズムを構築するため,遺伝的アルゴリズムによる最適化,およびベーシスベクトル法による最適化の2種を検討し,両者において効率的な最適化が可能であることを検証した.一方,最適化によって決定された人口耳小骨形状が,実際の中耳内で所望の伝音特性を発揮することを実験的に検証可能な実験系プラットフォームを構築する必要があるため,これについても検証を行った.その結果,実寸大モデルは非常に微小であるため,背景振動の影響を受けやすいが,ノイズ成分の影響を除去するために時間伸長したTSP信号を用いて伝音特性を計測することによって,ノイズの影響を除去した伝音特性を計測可能であることを確認した.
2: おおむね順調に進展している
はじめに,症状モニタリングに利用するため,医師の視診,中耳内の側頭骨CTデータ,聴力およびWTM検査,LDVにより逆推定した中耳内のそれぞれの状態をスコアとして表す.これと併せて,LDVによる鼓膜ダイナミクスの計測結果を基にして,鼓膜および前庭窓で支持された耳小骨連鎖の振動特性を逆推定しておく.次に,聴感評価システムの構築として,聴力推定結果から,日常生活で必要とされる音声情報の聞こえについて信号処理手法を用いた可聴化シミュレーションを実施する.その後,最適化形状の聴力による聞こえが有意に向上したか,MEスコアを用いて検証する.次に,患者に関する各スコアを入力し,初期条件および最適化後の各形状データ,聴力情報などをグローバル分類器として学習させることを試みる.最後に,予後データの整備・スコア化として,当面は予後データが得られないため,東京慈恵会医大の保有している予後データについて,内容を精査した上でスコア化し,Phase 4のグローバル分類器へ入力できるようにデータ整備を行うための予備検討を実施する.
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Frontiers in Bioengineering and Biotechnology
巻: 10 ページ: 1-15
10.3389/fbioe.2022.967475