研究課題/領域番号 |
22H01444
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
大岡 昌博 麗澤大学, 全学, 教授 (50233044)
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研究分担者 |
小村 啓 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (00881096)
下田 真吾 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (20415186)
鈴木 泰博 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (50292983)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 触覚情報 / 記録・再生 / 触譜 / 感情制御 / 爪色センサ |
研究実績の概要 |
本年度では、前年度の成果に基づき各検討項目をさらに発展させるための研究活動を行った。このため、前年度に引き続いてシステム全体のハードウェアとソフトウェアの完成を第一の目標として研究を進めた。各研究項目ごとの実績については以下にまとめる。 1)触覚記録・再生 触覚記録・再生に適用するために,爪色触覚センサのサイズの小型化のための改良を進めた。レーザー計測器により被験者の指先形状を計測し、その値に基づき3Dプリンタでセンサヘッドを製作することにより、センサヘッド部分の爪に装着する部分の形状の精度を高めることに成功した。開発した改良型のセンサヘッドを用いて実験を行った。その結果、垂直荷重に関する計測精度については、センサを爪から着脱しても十分な精度で計測可能であることを確認した。しかしせん断力については、まだ所定の性能が出ていないために、改良を継続することとした。 2)触覚センシング 再生側にロボットに装着する三軸触覚センサについては、ハンドアームロボットに搭載するためのハードウェアとソフトウェアの開発を進めた。また、触覚センサに存在するヒステリシスを除去する方法についても検討を進めた。 3)アクチュエーション 環境の状態変化に対応して自動学習が可能となるように、Tacit Learning(TL)を出力側のロボットシステムに導入することを検討した。TLはローカルミニマムに導く方法であるために、生体が環境に適用していくための方策を与えることが可能であるとの考えを元に、次の4)と関連して疼痛などの制御に適用する研究を進めた。 4)触覚心理・理論化 触譜の進行によって感情がどのように変化するのか、ピアノの演奏に対して基礎調査を行い、メルスペクトラム解析が効果的であることを明らかにした。また、気持ちよさに結び付く触譜のパターンを探るため、VR環境下でのリラクゼーションについても検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べたように、各検討項目の研究計画について当初の計画に沿っておおむね進めることができた。また、本研究に関連した研究成果を国内会議や雑誌等にて発表することができた。また、2回にわたって、研究分担者との報告会を実施した。したがって、「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。各項目ごとに、進捗状況をまとめる。 1)触覚記録・再生 センサヘッド分離型のセンサ構造を前年度より精度を高めて製作したり、着脱による触覚データの検出精度に関して検討を進めた。その結果、垂直力に関しては高い精度で検出可能であることを明らかにした。関連する成果は、国内学会2件の口頭発表として対外的に発信できた。 2)触覚センシング ロボットに装着する三軸触覚センサの開発についても当初の計画通りについて順調に進めることができた.さらに、本触覚センサがもつヒステリシス特性をキャンセルする方策についても考案し関連する実機搭載した実験も実施できた。関連する成果については1件の国内会議で発表した。 3)アクチュエーション 次の項目4)に関連して、Tacit Learningににより疼痛を制御する方法論について調査研究を行い、その成果を1件の国内会議で発表した。 4)触覚心理・理論化 ピアノ演奏における触譜と感情変化について調査を進めた。また、振動を利用したデバイスを用いて触覚刺激と心理変化についても調査を進めた。以上の成果については、1件の著書において発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、システム全体のハードウェアとソフトウェアの完成を目指し、諸問題を解決することを第一の目標として、これまで進めてきた研究を継続する。各研究項目についての推進方針について以下にまとめる。 1)触覚記録・再生 操作者の指から着脱しても十分な精度が確保できるように、センサヘッドの構造・製造方法について改良を継続する。また、学習データの収集方法や学習方法についても改良をすすめる。さらに、今後も引き続いてセンサの小型化、リアルタイム性,触譜の自動生成等の諸課題に取り組む。以上を実施して、当初の目標である触覚データの記録再生システムの実現を目指す。 2)触覚センシング これまでに、触覚センサの単体の試験中に光が漏れることや皮膚ゴムのアクリルコアへの吸着現象等不具合についてはセンサ構造を改良することによってほぼ解決した。また、触覚センサをロボットに搭載した実験を実施して、一通りの動作について確認した。今後は、触覚センサの改良試作を継続するとともに、位置制御ベースの力制御を確立して、触覚センサ搭載ロボットハンドの把握力制御の実現する。このようにして開発した三軸触覚センサ搭載ハンドアームを用いて、1)で獲得した触覚データを再生する検証実験を実施する。 3)アクチュエーション 環境の状態変化に対応してローカルミニマムの状態に導くTacit Learning(TL)をロボットシステムに導入することを検討する。それと同時に、環境にあった学習を可能とするTLの原理をヒトの触覚心理の変化を促す機構に応用する研究も併せて進めて4)に活かすことを目指す。 4)触覚心理・理論化 今後は、1)で開発した爪色センサを用いて、専門化のマッサージにおける触覚情報を収集して触譜に翻訳する試験を実施する。またそれと同時に、振動デバイスを用いて触覚心理を変化させる研究も併せ行う。
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