研究課題/領域番号 |
22H01446
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
真下 智昭 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (20600654)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロモータ / 超音波モータ / 圧電アクチュエータ / マイクロロボット |
研究実績の概要 |
これまでに,光造形3Dプリンタを用いて,ギアを試作する方法の研究を行ってきた.ギアは直径0.65mmで試作することが可能であり,直径約2mmの遊星減速機を試作することができていた.当該年度では,試作したギアの評価を行ったところ,ギアの破損や,著しいトルク伝達効率の低下が観察された.そこで,最もシンプルな一対の平歯車における強度やトルク伝達効率の調査を行った.その結果,一対のギアセットにおいても,トルク伝達効率の低下が観察された.この理由としては,材料がアクリル樹脂であり弾性変形が大きいことや,3Dプリンタの造形精度による摩擦などが関係していると考えられる. マイクロ超音波モータ(3.2mm×3.2mm×2mm)には,磁場の回転を検出できるセンサを取り付けて,フィードバック制御をできるようした.複数のマイクロ超音波モータを制御できる制御回路の開発を行った.回路は,発振器(DDS)とアンプから構成され,それぞれの応答時間は1ミリ秒以下であるため,遅延を気にすることなく,モータの制御が可能になる.駆動回路を制御することで,印加電圧の周波数,振幅,位相を変えて,モータ性能の評価を行った.またバースト波による制御が可能であることを示した. マイクロ超音波モータを用いたマイクロハンドの設計開発および評価を行った.また,ハンドの先端に取り付けることが可能な約1mmサイズの力覚センサの開発を行った. マイクロ超音波モータにマイクロギアを取り付けたマイクロギアードモータを用いて,車輪型マイクロロボットの開発を行った.ロボットの大きさは約10mmであり,磁石を内蔵した車輪を採用することで,磁性材料でできた垂直面や天井面などの移動が可能になった.このことは,極小の管内検査ロボットなどに応用できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光造形式の3Dプリンタを用いてマイクロギアと遊星歯車を製作し,1mm以下の部品でも精度よく試作できるようになっている.強度やトルク伝達効率には課題が残るが,研究を進めるために使用できるクオリティを実現できており,おおむね順調に進展している.樹脂製ギアの強度が低いことや効率の低下はネガティブな結果であるが,想定の範囲内であり,研究計画にしたがって電気鋳造を用いたギアの金属化などによる性能改善のための研究を行う. 遊星減速機は小型化に適した機構だが,1個のリングギアに覆われるため,問題が発生したときに問題の箇所を特定することが困難であった.そこで,遊星歯車を段ごとに分ける設計にしたことで,問題が特定しやすいだけでなく,ギア比の選定をしやすくなった.このギアのトルク伝達効率は比較的高い値が得られており,おおむね当初目標としていた出力トルクが得られた. 小型・高性能のマイクロモータを開発するために,他の振動モードを用いたマイクロ超音波モータの設計開発を行った.有限要素法による圧電解析で,ステータの設計を変えて解析を行い,効率よく楕円運動を発生できる形状と振動モードを調査した.また,ステータとロータの接触面でのロスを減らすため,ステータに表面処理を施し,実験を行ったところ,モータの寿命が上がる挙動が観察された.実験量はまだ十分でないものの,おおむね順調に研究は進展している. モータ,センサ,コントローラから構成されたフィードバック制御システムの開発を行った.小型センサをマイクロモータに実装することで,角度および角速度を制御できるようになった.印加電圧の周波数で制御を実証することができており,精度や外乱などの課題がまだ残るものの,おおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
試作したマイクロギアと遊星減速機のトルク伝達効率が低い理由として考えられるのは,ギア形状,ギア波面の表面粗さ(摩擦損失),弾性変形などであり,詳しい原因の調査を行う.メッキや電鋳の技術を用いて,表面粗さの向上などを試みる.3Dプリンタで母型(モールド型)をつくり,電鋳加工で金属製マイクロギアを製作する研究も継続する.試作したギアの効率,強度,耐久性などを評価する. 現在の設計のマイクロ超音波モータはこれまでの研究によって大きく性能が向上した一方で,改善余地が少なくなってきた.そこで,さらに性能を上げることを目的として,新発想のモータ設計に着手する.圧電素子の31変形と15変形を組み合わせることで大きな振幅が得られるモータや,インパクトタイプのモータの設計開発を行い実験評価を行う.また,大きなトルクを得らえる構造のアウターロータタイプモータも設計開発する.圧電解析を用いてステータの最適設計を行う.ステータとロータの接触面でのロスを改善するために,最適な接触状態(摩擦)の調査を継続する. モータ,センサ,コントローラから構成されるフィードバック制御システムの研究開発も継続する.角加速度からロータ出力軸にかかる力の大きさを推定できるようにする.3個以上のモータを同期的に制御できる駆動システムの開発を行う.また,ロボット先端にかかる微小な力を検出し,操作者に力のフィードバックするシステムの開発も行う.力を検出するには,振動子の共振周波数の変化から,かかる力の大きさを推定する原理のセンサを使用し,その目標サイズは約1mmとする.圧電材料には,一般的なハード材の他,高いQ値を持つ単結晶素子などを使用して評価する.アームの回転や屈曲,ハンドの開閉が可能な鉗子ロボットを,直径2mmで設計し,実験用の狭隘環境での実現可能性を示す.
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