研究課題/領域番号 |
22H01456
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加古川 篤 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (50755486)
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研究分担者 |
坂上 憲光 東海大学, 海洋学部, 教授 (20373102)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水中ロボット / 力/トルクセンサレス / 水没型モータ / 防水シールレス / 潤滑油レス / 接触作業 |
研究実績の概要 |
2022年度では,高分子材料エスベアを用いた無潤滑で高摺動性を持つ3-K型遊星歯車減速機に防錆処理を施したブラシレスDCモータと非接触磁気エンコーダを組み合わせて防水シールや潤滑油を用いない水没型ギアード電動サーボモータを開発した.このギアードモータを用いて2自由度アームを構成し,力/トルクセンサを用いない水中力制御を実現した. 関節トルクやロボットに加わる外力はモータの電流から推定される.この精度が明らかでなかったため,陸上と水中の2つの環境で力の計測実験を行った.また,従来の波動歯車減速機のような低バックラッシュであるが摺動性の悪いギアを用いた場合との比較を行うため,本研究のものと従来型のものでセンサレス力制御の比較実験を行った.結果から,1リンク0.3m程度のアームであれば手先力約5Nから制御可能であることが明らかとなった.これらの成果をまとめ,防水シールを用いない水没型ギアード電動サーボモータによる水中力制御について,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 2022にて報告した.また,「潤滑油とシーリングを用いない水没型ギアード電動サーボモータの電流ベーストルク制御の性能評価」と題して第40回日本ロボット学会学術講演会にて発表した. さらに,本研究のギアードモータをエンドエフェクタにも応用し,水中の対象物をつかんで把持力制御可能なグリッパも開発した.農林水産業などでの利用を想定し,防水シールなしで水中の大根を把持することに成功した.その他,東京工業大学田中博人研究室で行われているペンギン型遊泳ロボットの羽部にも本方式のギアードモータが採用されている.これらの成果は2023年6月に愛知県名古屋市で開催される日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 2023にて報告予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的とする水没型ギアードモータの試作機を完成させたほか,実際に水中でセンサレスの力制御実験を行い,一定の外力以上であれば制御可能であることを示したため.また,モータドライバを一体化したモジュール化設計にも成功しつつあるため. そのほか,昨年度ではロボット関節に加わる衝撃力の緩和性能を検証するため,低摩擦減速機,モータ,リンク,被覆材により構成される1リンク関節の衝突シミュレーションと実機実験を行った.ここから得られた衝撃緩和に必要な条件や回避動作の重要性などについて内容を整理している.
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今後の研究の推進方策 |
現在使用している高分子材料製の減速機の減速比は50対1と100対1である.高分子材料であるため出力軸の定格許容トルクは約5Nmと小さく,10Nm程度から寿命が低下し始めることがわかっている.しかし,本研究の防錆化したブラシレスDCモータの定格トルクは約0.5Nmであり,これに50対1や100対1の減速比をかけると25~50Nmとなってしまう.これは減速機の定格値からすると過大であるため,現状では出力トルクが10Nmを超えないように電流を制限して小さなトルク領域で利用している.実験から,これらのトルクは定格値よりも大幅に小さな領域であるため,トルク定数のバラツキが大きいことが明らかとなった. そこで,薄型の扁平ブラシレスDCモータに防錆処理を施し,新たな水没型ギアード電動サーボモータを試作する.今回使用する扁平型モータの定格トルクは0.07Nmであるため,100対1の減速機を付けても10Nmを超えず,適正な組み合わせであることが予想される.これを用いてセンサレス力制御の精度向上を目指すとともに,接触作業可能な水中ヘビ型ロボット,水中グリッパ,水中モバイルマニピュレータなどへの展開を試みる.特に,環境への接触作業(掘削など)や水中構造物への固定などにおけるセンサレス力制御性能の有用性を検証する. また,上記の衝撃緩和性能の評価実験では,リンク自らが移動する能動的接触であったが,リンクが停止状態で外部から物体が接触する受動的接触における性能評価も行う予定である.
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