研究課題/領域番号 |
22H01463
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
萩原 誠 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20436710)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | パワーエレクトロニクス / 電気自動車 / 急速充電器 / 直流-直流変換器 |
研究実績の概要 |
本研究では、電気自動車用急速充電器への適用を目的とした絶縁型直流変換器の検討を行っている。具体的には、従来型の三相DAB(Dual-Active-Bridge)変換器に、双方向チョッパ回路のカスケード接続からなる補助変換器を付加することで、従来のDAB変換器では実現できない主変換器の基本波力率を同時に1に制御可能、電流フィードバック制御によるロバストな制御性の実現、無効電流の低減による変換器損失の低減などが実現できる。 2023年度は、上記絶縁型直流変換器の検討に加えて、上記絶縁型直流変換器に適用可能な技術である非絶縁型直流変換器の検討も同時に行った。初めに、絶縁型直流変換器の研究実績の概要に関して言及する。前年度は、従来型の二台の三相DAB変換器の通電率を共に0.5で固定して検討を行ったが、変換器に流れる直流電流が増加し、効率が低下するという問題点があった。同時に、過変調により送電電力が制限される課題があった。本研究では、一方の三相DAB変換器の通電率を可変にすることで上記課題解決を試みた。得られた実験データは、現在当研究分野で最も権威のある国際学会誌の一つであるIEEE TIA(Transactions on Industry Applications)に投稿中である。また、2022年度の成果に関しては、既に上記論文誌に採択済みであり、2024年2月号に掲載済みである。 非絶縁型直流変換器に関しても同様に検討を行い、補助変換器に使用する単位変換器の低減による低損失化、低コスト化を試みた。2 kWミニモデルを用いた実験的検討を行い、得られた研究データは当該研究分野で最も権威のある論文誌であるECCE2023にて発表した。また、当該研究分野で最も権威のある研究分野の一つであるIEEE PELSに採択され2024年中に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、提案変換器の動作原理・制御法の確立に注力したが、上記妥当性を2 kWミニモデルにより確認し、上記データは当該研究分野で最も権威のある学会誌であるIEEE TIA (Transactions on Industry Applications)に採択された。また、2023年度は更なる高効率化および伝送電力向上を目的として、可変通電率の導入を試みたが、上記の妥当性を数値解析および実験検証により確認でき、特に伝送電力に関しては、従来法と比較し大幅な増大が可能になるなど、当初の想定以上の結果を得ることができた。また、上記検討結果をまとめた論文は現在IEEE TIAに投稿中であり、5月6月中に採択を予定している。上記は定常状態のみならず過渡状態の動作特性も論じており、当初の想定通りの結果を得られた。上記を鑑みると、おおむね研究は順調に進展していると評価できる。 また、非絶縁型変換器の検討に関しても同様に進めている。今年度から補助変換器に単相フルブリッジ変換器を使用したタイプと、スイッチトキャパシタ変換器をベースとした非絶縁型直流変換器の検討を追加したが、前者に関しては、補助変換器のブリッジ変換器数を最小化した場合も良好な特性を実現できており、得られた実験データは当該研究分野で最も権威のある国際会議であるECCE(Energy Conversion Congress and Expo)2023にて発表を行うに至った。また、スイッチトキャパシタ変換器をベースとした非絶縁型直流変換器に関しては、今年度は制御法と動作原理の確立に注力したが、既に国内の学会で2回発表(2023年電気学会半導体電力変換研究会、2024年電気学会全国大会)で発表するなど、順調に成果を出しており、その点からも研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関して、絶縁型直流変換器と非絶縁型直流変換器に関して別々に言及する。絶縁型直流変換器に関しては、昨年度までの検討結果により、三相DAB変換器の基本波周波数の上限が1 kHz程度に制限されるという技術的課題を明らかにした。上記を解決するためには、従来のフィードバック制御による電力制御では限界が存在するため、位相シフト制御等のフィードフォワード制御による制御が適切ではないかと考える。一方、フィードバック制御とフィードフォワード制御では制御の考え方が根本的に異なるため、制御法・動作原理の再構築が必要不可欠である。上記を考慮して、初めにコンピュータシミュレーションによる位相シフト制御適用時の制御法・動作原理の再構築を試みる。また、上記と同時に回路方式の改良の可能性に関しても検討する。具体的には、現状変換器に使用する変圧器の中性点を三相DAB変換器の負極端子に接続していたが、この場合余分な直流電流が流れることにより変換器効率が低下する問題点が存在した。上記を改良するため、中性点をフローティングにした場合の変換器動作を解明する。初めに、コンピュータシミュレーションによる検討を行い、次に2 kWミニモデルを用いた実験により検討する。 また、非絶縁型直流変換器に関しては、フルブリッジ変換器を使用したバージョンに関しては、零電流時に制御系が不安定になる技術的課題が存在するため、上記の解決を初めに試みる。また、実際の変換器の詳細な効率評価を行い、本変換器が一番適切な動作範囲を明らかにする。スイッチトキャパシタ変換器をベースにした非絶縁型直流変換器に関しては、フィードバック制御による電力制御実現が課題であるため、上記の実現を試みる。得られた実験結果は、国内外の権威ある学術論文誌、国際国内会議にて発表を行う予定である。
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