研究課題/領域番号 |
22H01464
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福井 聡 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70293199)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高温超伝導誘導電動機 / 高温超伝導コイル |
研究実績の概要 |
カゴ形誘導機の2次導体を高温超伝導線材で構成して超伝導的に短絡したHTS誘導機は,誘導機と同期機の機能を併せ持った新しい回転機である。この特徴は,回転数や容量に依存せず,また界磁励磁が不要であることから,広範囲な輸送機器応用が期待できる。本研究では,HTS線材で構成が容易なコイルを用い,高空隙磁界・高導体利用率・トルク発生面最大化を同時に実現できるトロイダル巻線固定子を用いたアキシャルギャップ型高温超伝導誘導機(HTS-AGIM)を提案する。電磁界解析とHTSの電磁的・熱的特性を考慮した等価回路解析及び負荷側機械特性を連成することによりHTS-AGIMの回転機特性の解析モデルを開発し,小型モデル機を用いた妥当性検証を行い,HTS-AGIMの電磁設計手法を構築する。よって, HTS-AGIMの基盤技術の構築に寄与することを目的としている。 2022年度は,HTS-AGIMの特性解析手法の開発及び妥当性検証,更に特性評価を行うためのベースになる小型モデル機の開発を進めた。当初の設計では,固定子用コアは,測定時のコイル組換えを容易にするために分割型を予定していた。しかしながら,機械加工上の問題が明らかになり,分割コア構造は断念して一体コア構造に設計変更を行った。それに付随して,シャフト・軸受・フレーム・電流供給端子なども再設計した。また,ヘガネス社の生産計画の関係から,プロトタイピング材の納期が遅れた。これらの影響により,固定子コア及びコアサポートの製作を優先して行った。また,固定子巻線のモデルを作製し,通電特性(磁界分布・臨界電流・交流損失の測定)を実施し,基礎データの収集と整理を行った。また,固定子コアに銅コイルを巻線して3相交流通電時の損失を測定し銅損を差し引くことにより,起磁力と鉄損の関係を導出し,今後の特性評価のための基礎データとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は,機械加工上の問題により,当初設計の分割型固定子コア構造は断念して一体コア構造に設計変更を行った。それに付随して,シャフト・軸受・フレーム・電流供給端子なども再設計したため,当初計画以上の時間を要した。更に,ヘガネス社プロトタイピング材の納期が遅れた。研究の段階的進行上,まずは固定子の評価を行う必要があるため,固定子コア及びコアサポートの製作を優先し,回転子の製作を保留した。以上より,当初計画より若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は以下の研究を遂行する予定である。 ・固定子巻線の交流損失特性:HTS-AGIMでは,固定子銅損はHTS巻線の交流損失が対応する。モデル機において,固定子HTS巻線の交流損失特性を実測する。HTSコイルの(基本波1周期の)交流損失は,理論的に通電電流と経験磁界にのみ依存するため,測定した交流損失特性を電流依存する等価的な非線形抵抗としてモデル化する。 ・回転子HTS導体の熱・電磁特性の定量化:回転子導体(HTSと銅の複合導体)のFEM熱解析を行う。また,回転子のHTS2次とコア間の熱伝導特性や周囲冷媒への熱伝達特性は,評価サンプルを作製し実測を行う。よって,運転中に想定される回転子電流の範囲での過渡的な熱・電磁特性を定量化する。 ・等価回路パラメータの同定:モデル機の等価回路パラメータを拘束試験及び無負荷試験を行うことにより測定する。またFEM解析で,拘束試験・無負荷試験を模擬し,等価回路パラメータを求め,測定結果と比較する。 ・定常運転特性評価:モデル機の定常運転特性を測定する。始動-すべり運転-同期運転時のトルク・出力変化,負荷変化時の運転モードの変化などを評価する。これらの評価は,基本的な定常運転特性の把握を目的とする。
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