研究課題/領域番号 |
22H01468
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
稲田 亮史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30345954)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化物固体電解質 / 高容量金属負極 / 充放電 / 微細組織制御 / 界面形成 |
研究実績の概要 |
現行リチウムイオン電池を凌駕するエネルギー密度と高い安全性を兼ね備えた全固体電池において,リチウム(Li)やナトリウム(Na)等の高容量金属負極の使用が検討されている。本研究では,化学的安定性に優れた酸化物固体電解質に着目し,その微細組織制御や電気伝導特性制御によって,上記の金属負極の安定動作を実現を目指す。初年度の主な成果は以下の通りである。 ①異材添加によるLi系固体電解質の組織制御と電気化学特性評価 金属Li負極に対して化学的・電気化学的安定性を示すLi7La3Zr2O12(LLZO, ただしZrの一部をTaで置換)について,Ga2O3添加によるLLZO焼結体の組織制御を試みた。Ga2O3添加量と焼結条件(温度・時間)の調整を組み合わせることにより,粒子径およびその均質性が異なる試料を作り分けることができた。イオン伝導率に関しては,数10μm程度に成長した粒子を多く含む試料の方が高特性を示したが,試料の両端面に金属Liを接合した対称セルで評価したLiデンドライト耐性は,数μm程度の粒子が均質に焼結した試料の方が優れていた。対称セルでLiデンドライトによる短絡挙動が生じる限界電流密度(CCD)は最大で0.9mA/cm2とGa2O3を添加していない試料の2倍程度に達した。 ②Na系固体電解質の高密度成型に向けた焼結条件の検討とイオン伝導特性評価 金属Na負極に対して安定なNa系固体電解質のうちNa2Zn2TeO6(NZTO)に着目し,高密度成型に有効な焼結条件とイオン伝導特性評価に注力した。750~850℃程度の範囲でほぼ単一相の焼結試料が作製でき,室温下で0.4mS/cmのイオン伝導率を得た。一方,粒子形態が板状で不均一であるため,相対密度は現状85%程度に留まっている。今後,金属Na負極と組み合わせた特性評価に向けて,更なる高密度成型を図る必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li系固体電解質LLZOに関しては,異材添加と焼結条件の包括的な制御を通じて,室温下で0.8~1 mS/cm程度の高いイオン伝導率を示すと共に,金属Li負極の安定動作に適した組織を有する試料を再現性良く合成することができた。また,Na系固体電解質NZTOについては,高密度成型に課題があるものの,室温下で10-4 S/cm以上のイオン伝導率を再現性良く得るための試料合成条件を概ね確立することができた。 以上より,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展している,と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
①Li系固体電解質の微細組織・電気的特性制御による電気化学的性能向上 前年度より引き続き,焼結手法および異材添加によりLi系固体電解質の微細組織・電子伝導性制御を検討する。作製した試料の結晶相,微細組織観察等の分析と共に,電気伝導特性(イオン伝導率,電子伝導率)を測定・評価する。更に,Li/固体電解質/Li構造の対称セルを不活性ガス雰囲気下で構成する。通電電流密度を変化させつつセルに電流を通電した際の電圧応答をモニタリングし,Liデンドライト析出耐性を評価する。室温下での限界電流密度CCDとして1 mA/cm2以上の達成すると共に,別途調製した合材正極と組み合わせたフルセルでの充放電試験を行い,長期充放電サイクル試験を行う。 ②Na系固体電解質の微細組織・電気的特性制御 Na金属負極に対して高い還元耐性を示すNZTOやNa5YSi4O12(NYSO)に対して,加圧焼結を援用した高密度成型および微細組織制御を試みる。作製した試料の結晶相,微細組織観察等の分析を行うと共に,電気伝導特性(イオン伝導率,電子伝導率)を測定・評価し,採用した方策が微細組織・電気伝導特性に及ぼす影響を精査する。これと並行して,作製した固体電解質資料とNa金属負極との低抵抗界面形成に向けた検討を進める。
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