研究課題/領域番号 |
22H01498
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
若家 冨士男 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (60240454)
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研究分担者 |
村上 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20403123)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 磁気力顕微鏡 / 高次振動モード |
研究実績の概要 |
前年度に購入した磁気力顕微鏡を改造し,フォトディテクタの信号を外部に取り出しオシロスコープで観察できるようにした。また,外部から電源を接続し,ステージのコントロールとプローブ高さのコントロールを可能にした。さらに,励振電圧とフォトディテクタのシグナルをロックインアンプに入力し,位相差を検出した。これらの改造により,基板の X,Y ポジションと基板表面からのプローブ高さを外部からコントロールしながら,任意のポジションと高さにおけるプローブ振動の位相差を計測できるようになった。さらに,それらを制御するためのPCを接続し,Microsoft の C# を使ってPC上での制御ソフトを自作した。その結果,ステージのポジションとプローブの基板からの高さをPCから制御しながら,プローブ振動の位相を計測し,それをPCに取り込むことに成功した。 また,磁気力顕微鏡の位相計測感度を向上するための新しい試みとして,カンチレバーの高次の振動モードを用いて振動周波数を上げる手法を考案し,カンチレバーの運動方程式と,基板に発生する渦電流と,渦電流が発生する磁場と,その磁場からカンチレバーが受ける力のすべてを考慮した理論を構築した。しかし,複雑な計算の結果,高次の振動モードを利用すると,かえって位相検出感度が低下することが判明した。高次の振動モードを利用すれば,振動周波数が増大し,渦電流も大きくなるのだが,高次の振動モードでは実効的なバネ定数が大きくなってしまうことがその原因であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたとおり,市販の磁気力顕微鏡を改造した。フォトディテクタのシグナルを外部に取り出し,電圧源の電圧をピエゾに印加してステージを制御し,励振電圧とフォトディテクタの位相差をロックインアンプで検出した。計測するための試料が完成しなかった点が本年度の反省点である。 理論的研究は予想していなかった方向に進んだ。カンチレバーの高次の振動モードを利用した場合の,カンチレバーの運動方程式に,渦電流の大きさ,渦電流が発生する磁場,その磁場から渦電流が受ける力のすべてを考慮した複雑な方程式の解析解を求めることができた。 以上を総合的に判断し「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の理論的検討により,カンチレバーの高次の振動モードを利用することは,位相検出感度を上げることにつながらないことが判明したため,今後は,プローブ自身の改造や,プローブと基板の距離を極限まで近づけるなど,さまざまな方法で感度を上げていく。そのための理論の構築とシミュレーションも行う。 また,計測するための試料の準備も進める。絶縁体,金属,半導体をパターニングし,表面から様々な深さに様々な抵抗率の層を作製し,それらを磁気力顕微鏡で検出する。
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