研究課題/領域番号 |
22H01509
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
小木曽 公尚 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30379549)
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研究分担者 |
金子 修 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00314394)
畑 秀明 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (00713041)
和田 洋一郎 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (10322033)
小泉 憲裕 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10396765)
定本 知徳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40839966)
宮嵜 哲郎 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (60734481)
澤田 賢治 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 准教授 (80550946)
猪俣 敦夫 大阪大学, 情報セキュリティ本部, 教授 (90505869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 暗号化制御 / サイバーセキュリティ / セキュリティ指標 / 検証実験 |
研究実績の概要 |
本研究では,暗号化制御系における秘匿性指標(セキュリティメトリクス)の顕在化を目的と定め,つぎの4課題 i) セキュリティメトリクスの本質解明,ii) データ駆動制御への展開,iii) 遠隔操作ロボットへの展開,iv) 放射性医薬品製造への展開に対し,制御工学・情報セキュリティ・医療ロボティクス・ソフトウェア工学を専門とする学際研究チームで臨み,本研究の目的達成を目指す.初年度は,暗号化制御システムにおけるセキュリティメトリクスを明らかにすることを主目的と定め,制御理論と暗号理論の融合により動的システムに対するセキュリティメトリクスを明らかにする数学的概念と計算ツールや,検証作業を目的とする実験環境を整備し,制御システムセキュリティの確立を目指した. その結果,課題 i) および iii) に関する以下の成果が得られた.まず,i) に関し,制御系パラメータの推定攻撃のもとで,暗号文解読(鍵解読)時間およびパラメータの推定精度を定量化指標として採用することで,最適な暗号化制御系設計手法に有用であることが確認できた (IEEE CDC).これにより,セキュリティメトリクスの本質解明の手掛かりが見つかり,制御信号の盗聴攻撃や制御モデルの推定攻撃(システム同定攻撃)を想定した暗号化制御系の最適設計問題の創出に繋がることが期待できる.つぎに,iii) に関し,遠隔操作ロボットや医療ロボットなどで用いられる柔軟アクチュエータの駆動系に対し,暗号化制御を応用することでセキュアな駆動装置およびリアルタイム攻撃検知機能を開発した (AR).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御システムのセキュリティ指標およびそれに係る数学的概念と計算ツール,そして,暗号化制御系の実験環境を整備するために,課題i),ii),および iii) に取り組んでいる.具体的に,i) に関し,暗号理論分野における証明可能安全性の概念を応用することで,動的鍵暗号方式を併用する暗号化制御系の安全性 (Indistinguishability under Parameter Estimation Attack: IND-PEA) をゲームの数理で証明できることがわかり,その成果を IEEE TAC に投稿中である.つぎに,ii) に関し,暗号文の観測信号から暗号文の制御入力を設計するデータ駆動型暗号化制御系を構築しており,ある線形な制御則の場合に実現可能なことがわかり,その成果を IEEE TCNS へ投稿中である.そして,iii) に関し,空気圧人工筋を用いた柔軟駆動系の力と位置の暗号化同時制御を実現するために,有理多項式型非線形制御則を暗号化制御則に近似する手法を開発し,実機実証によりその有効性を確認し,一連の成果を IEEE TMECH へ投稿中である. さらに,各課題に取り組むためのツールの整備や実験ノウハウの獲得として,産業用直動ステージを用いた暗号化制御系を構築し,サイバー攻撃実験によるリアルタイム攻撃検知機能の検証や,より強固なセキュリティ強度を有する高機能暗号化方式との併用がアルタイム制御・攻撃検知機能に有用であるかどうかを評価中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策については,本研究の目的である暗号化制御系におけるセキュリティメトリクスを顕在化するために,課題 i) から課題 iv) の全課題に対し,制御工学・情報セキュリティ・医療ロボティクス・ソフトウェア工学を専門とする学際研究チームで理論的および実験的プローチで引き続き取り組む.課題i) に関して,定式化した暗号化制御のセキュリティ指標をもとに,制御器の最適なパラメータ設計や暗号方式の鍵長設計の議論を経て,各課題の暗号化制御系へ展開して暗号化制御系の設計手法を検討する.そして,暗号化制御系の最適設計問題に対する解法の確立を目指す.課題iii) については,遠隔手術ロボットの駆動装置として重要な役割を果たす,空気圧駆動装置を用いたバイラテラル暗号化制御系の開発及びサイバー攻撃検知などに取り組み,遠隔手術ロボットのサイバーセキュアな基盤技術を構築する.そして,課題iv) については,α線がん治療創薬の製造プロセスが完成次第,医薬品製造プロセスにおけるサイバーセキュリティのセキュリティリスク評価にもとづき,ロボット操作系の暗号化実装および模擬サイバー攻撃時の潜在的なリスク分類とシステムへの被害想定を評価する.
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