研究課題/領域番号 |
22H01520
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
雨宮 智宏 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80551275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メタマテリアル |
研究実績の概要 |
本年は、可視域にて透磁率を精密にコントロールできる新たなメタマテリアル構造を提案した。一般的に、対象物を不可視化させる際には、その周囲の誘電率と透磁率の値を空間位置に対して極めて精細に制御することが要求される。メタマテリアルは構成要素となる金属構造体を適切にデザインすることで、誘電率や透磁率の値を人工的に制御している。このとき、構造体の寸法に対して誘電率や透磁率の値が大きく変化するようだと、精細な値の制御が困難となる。可視・赤外のような高周波帯で動作するメタマテリアル構造として、現在までに多分割スプリットリング共振器やフィッシュネット構造などが提案されているが、いずれも寸法が数ナノ変化しただけで透磁率が大きく変化するため、不可視化を実現する上で適当とはいえない。そこで、高周波において透磁率の値を精密に制御可能なメタマテリアル構造を提案した。 提案したメタマテリアルの構造は4本の金属細線を積層した井桁型構造となっており、構造の中央がリアクタンス(L)として、1層目と2層目の金属細線が重なっている箇所周辺がキャパシタンス(C)として機能する。本構造では、各層における金属細線の間隔a を変化させると、LとCの値が互いに相反して変化する。これにより、メタマテリアルの共振周波数(ω=1/√LC)はa に対して極めて小さい変化量を示すため、透磁率の値を精密に設計することが可能となる。 可視(赤色)用に設計された井桁構造のメタマテリアルにおける透磁率の周波数依存性を解析した結果、対象周波数を410 THzに設定した場合、透磁率を0から0.5まで変化させるために、a には約40 nmの変化幅が許容され、これにより透磁率の値を精密に制御可能となる(例えば、メタマテリアルとして一般的な4分割スプリットリング共振器を用いた場合は、2-3 nmの変化幅しか許容されない)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,メタマテリアルフィルムを用いることにより,可視域における迷彩技術を構築することを目標とする。先行研究を発展させる形で,以下の研究目標を定めている。 1 高周波において透磁率を精密にコントロールできる井桁構造のメタマテリアルの提案および理論解析 2 井桁構造のメタマテリアルを内包したメタマテリアルフィルムを用いた可視光メタマテリアルクロークの作製と評価 本年度は、高周波化(可視域での動作)に向けて、可視域にて透磁率を精密にコントロールできる新たなメタマテリアル構造を提案することに成功しており、上記の1を満たしている。
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今後の研究の推進方策 |
上記設計に基づいて、実際に井桁構造のメタマテリアルを内包するメタマテリアルフィルムを作製し、それを対象物に巻きつけることで実際の光学迷彩動作を確認する。
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