研究課題
本年度は,CADで設計した形状と実際の形状の差異を抑制するために,形状近接効果補正を導入した。具体的には,電子ビーム描画装置のショットピッチ単位で形状補正を行った様々なCADパターンを用意し,それらを用いて作製プロセスを実施し各種形状データを集めた。実際に最適化された補正パターンを用いることで,角の丸まりが一定レベルで抑えられた金属細線が得られることを確認することに成功した。メタマテリアルフィルム作製には,従来の2次元平面内にメタマテリアルを配置する手法を用いた。ホスト材料には,可視全域に対して高い透明性を有するノルボルネン系のポリイミドを用いた。まず,支持基板上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(N-メチル-2-ピロリドンで希釈)を塗布し,熱処理により硬化させた。次に,電子ビーム描画およびリフトオフプロセスを用いて,金属から構成されるメタマテリアルを2次元的に形成した後,再度,ポリアミド酸を塗布・硬化させてメタマテリアルを埋め込み,反応性イオンエッチングによりポリイミドの膜厚を調整した。その後,電子ビーム描画装置の位置合わせ露光を用いることで,上記プロセスを繰り返し,井桁構造のメタマテリアルを作製した。最後に,支持基板から剥離を行ったメタマテリアルフィルムを,直径50 μmのタングステンワイヤとともにスライドガラスに挟んで滑走させることで巻きつけを行った。金属パターンの上部に前述のメタマテリアルフィルムを巻いたタングステンワイヤを配置し,ハイパースペクトルイメージングにより動作波長近傍について画像化した。この時,動作波長の730 nm近傍において,巻きつけられたメタマテリアルフィルムが不可視化に寄与し,タングステンワイヤ下部のパターンが観測することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
メタマテリアルフィルムを用いた可視帯における全方位型の光学迷彩の実現に成功していることから研究計画の当初目標は達成したといえる。メタマテリアルの構造として、4本の金属細線を積層した井桁型構造を採用することで、フィルム内のメタマテリアルのサイズ分布に約40 nmの変化幅を許容することに成功し,実験的にも可視域での光学迷彩を観測することに成功している。
従来の強度測定だけではなく、位相測定を行うことで、光学迷彩効果が確実に表れていることを確認する。具体的には、測定系の光学系のパスを二つに分け片方を参照光として用いることで,サンプルから反射してきた光の位相差を測定できるようにする予定である。入射光源は半導体レーザとし,二つのコリメート光(サンプルから反射してきた光と何もしていない参照光)を干渉させることで干渉縞の間隔などを確認する。特に,金属パターンのみ,金属パターンの上部にメタマテリアルフィルムを巻いたタングステンワイヤ,金属パターンの上部に通常のポリイミドフィルムを巻いたタングステンワイヤを配置したサンプルに対する干渉縞の傾向を比較することで,光学迷彩により確実に光が迂回していることを確認する。
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