研究課題/領域番号 |
22H01524
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大田 晃生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10553620)
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研究分担者 |
柚原 淳司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10273294)
田岡 紀之 名古屋大学, 工学研究科, 特任准教授 (50626009)
牧原 克典 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90553561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / シリコン / 極薄結晶 / 偏析 / 電子状態 |
研究実績の概要 |
14族元素であるGeやSiと共晶型の状態図をとるAgやAlを組み合わせた積層構造において、熱処理による表面偏析を利用して、金属薄膜表面に二次元結晶や極薄結晶、それらのヘテロ構造を形成する方法を探求した。Si(111)基板上にCVDにより厚さ85nmのSiGe(111)を堆積し、SiGe表面を化学溶液洗浄した後、厚さ30nmのAlおよびAg薄膜を抵抗加熱真空蒸着により形成した。XPS分析の結果、金属層にAlを用いた場合、熱処理によりSiおよびGeが表面偏析する。このとき、表面偏析したSiの大部分が酸化する一方、Geは600度の熱処理でも酸化が抑制されることが分かった。Agを用いた場合では、同様に表面偏析したSiとGeはどちらも酸化が進行した。Alを下地金属に用いることで、表面にAl酸化膜が形成され保護膜として機能し、偏析層(特にGe)の酸化を抑制できたと考えられる。また、表面偏析した原子の成長テンプレートとなるために、高結晶性のAl薄膜形成について調べた。化学溶液洗浄したSi(111)上では、厚さ30nmのAlを室温で堆積することにより、比較的平坦なAl(111)を形成できた。一方、100度および150度に基板加熱しAlを堆積すると表面荒れが顕在化し、Al(111)に加えてAl(200)が成長する。また、室温堆積した厚さ30 nmのAl/Si(111)構造では、500度までの窒素雰囲気中熱処理により、表面平坦性を維持しつつその結晶性が向上することが分かった。SiGeを用いた場合と同様にAl/Si(111)構造の場合も、熱処理によりAl酸化膜とAl薄膜との間にSi偏析し、その量は熱処理温度と伴に増大する。300度の熱処理では、時間に依らずSi量はほぼ一定であることから、その制御には熱処理時間よりも温度が重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Si(111)基板上だけでなくCVDにより形成したSiGe(111)/Si(111)基板上に共晶型の状態図を示す金属であるAlやAg薄膜を堆積し、熱処理によるSiおよびGeの偏析や表面近傍の化学結合状態の評価を進めることができた。SiGe(111)/Si(111)基板上の金属薄膜を形成した試料の場合、AgよりもAlを用いた方が、熱処理により表面偏析したSiやGeの酸化を抑制できることが分かった。また、Al薄膜上のSiやGeの偏析では、Siの酸化が優先的に進行し、Geは600度の比較的高い温度の熱処理でも酸化が抑制されることが明らかになった。これは形成した偏析層の安定性に関する重要な情報だと考えられる。二次元結晶や極薄結晶の形成に向けたAlとAgなどの共晶金属を介したSiやGeの拡散・偏析機構より詳細に理解するために、二年度以降も熱処理時のパラメータを変化させて引き続き実験を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、GeおよびSi原子が表面偏析する際の原子配列のテンプレートとなるAl薄膜をSiGe薄膜上に堆積し、結晶性や平坦性を向上するプロセスを探求する。また、表面偏析を促進するための熱処理の温度や時間、雰囲気、昇温/降温レートなどをパラメータとして、GeやSi原子の拡散や偏析量を調べ、極薄結晶の形成制御に関する知見を深める。化学結合や電子状態を実験的に明らかにするために放射光施設での評価も推進する。並行して、デバイス試作に向けたGe二次元結晶と低抵抗コンタクトの形成や、二次元結晶ヘテロ構造と支持基板のウェハ接合などの実験を進める。具体的には、熱処理により表面に元素偏析した試料とSi酸化膜/Si基板を、化学溶液処理やラジカル処理を行うことで、表面の-OH基を形成する。表面改質した後、両者を対向密着した状態で加圧することでウェハ接合を行う。ウェハ接合後、化学機械研磨や化学薬品により基板を除去し、Si酸化膜/Si基板上に二次元結晶/極薄結晶を転写する。
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