研究課題
ダイヤモンド窒素‐空孔(NV)センタはスピン状態が環境によって大きく変化するため、その変化を検出することで、超高感度量子センサとしての利用が期待されている。提案者らはこのダイヤモンドNVセンタの特長を活かして転移癌診断用の高感度・非侵襲磁気センサの開発を行ってきた。本課題では、近接場光の局在性を利用して、究極の磁気感度を達成可能とするダイヤモンドナノレーザを世界に先駆けて実現することを目的とする。本目的実証のため、本年度は、プラズモニック共振器を用いたNV中心のナノレーザーを検討した。一方、同構造の実現には高密度にNV中心の形成された単結晶ダイヤモンドに対する微細加工技術の確立が必要である。今回、レーザー発振に向けたプラズモニック構造の設計と、同構造の作製に向けたダイヤモンドナノ構造加工の可能性を見出すことに成功した。ナノレーザーの構造として、金/ダイヤモンドを用いたプラズモニック共振器の構造最適化を行った。シミュレーションにより、導波路中のパーセル係数を求めたところ、レーザー発振が観測された他材質のプラズモニック共振器と同等のパーセル係数が得られることを計算により確認した。続いてプラズモニック共振器の作製に向けたダイヤモンドナノ構造加工を行った。転写プリント法によりマスクをダイヤモンド基板上に集積した後、酸素プラズマによるエッチングを行った。本手法により、集積したマスクを残したままダイヤモンドが垂直にエッチングすることに成功し、設計した構造に必要となる導波路構造の作製に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
概要に示した通り、レーザ発振に十分なパーセル係数を満たす構造を見出すとともに、電磁界シミュレーションにより、金属/ダイヤモンド界面への電場の集中も確認することができた(Q値として1000以上)。また、構造の作製方法として、最終的な金膜上への配置を見据えた、転写プリント法の開発も行い、所望の導波路構造を作製することに成功した。以上より、初年度予想した、進捗よりも進んだ成果を得ることに成功した。
我々が開発した転写プリント法は、作製されたダイヤモンドナノ構造の金膜上への転写も容易であることから、所望のダイヤモンドレーザー発振実現が期待される。さらには、ダイヤモンドNVの特長を活かし3次元ベクトルイメージング技術を開発することで、神経回路網の活動を3次元的に可視化可能とする技術開発を目指す。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 61 ページ: 082004~082004
10.35848/1347-4065/ac7e10
Applied Physics Letters
巻: 121 ページ: 161103~161103
10.1063/5.0107854
https://lux.ee.tut.ac.jp/