研究課題
ダイヤモンド窒素‐空孔(NV)センタはスピン状態の発光強度が環境によって大きく変化するため、その変化量を検出することで、超高感度量子磁気センサとしての利用が期待されている。本課題では、近接場光の局在性を利用して、究極の磁気感度を達成可能とするダイヤモンドナノレーザを世界に先駆けて実現することを目的とする。本目的実証のため、本年度は、プラズモニック共振器を用いたNV中心のナノレーザーを検討した。一方、同構造の実現には高密度NV中心含有の単結晶ダイヤモンドに対する微細加工技術の確立が必要である。2023年度は、レーザー発振に向けたプラズモニック構造の設計に基づいて、ダイヤモンドナノ構造加工の可能性を見出すことに成功した。また、プラズモンモードに起因するスペクトルの観測に成功した。ナノレーザーの構造として、金/ダイヤモンドを用いたプラズモニック共振器の構造最適化を行った。シミュレーションにより、導波路中のパーセル係数を求めたところ、レーザー発振が観測された他材質のプラズモニック共振器と同等のパーセル係数が得られることを計算により確認した。また、ゲイン値がロス値を上回ることから設計した構造によるレーザー発振の可能性があることを確認した。続いてプラズモニック共振器の作製に向けたダイヤモンドナノ構造加工を行った。転写プリント法によりマスクをダイヤモンド基板上に集積した後、ドライエッチングを行った。本手法により、集積したマスクを残したままダイヤモンドがエッチングされ中空化することに成功し、設計した構造に必要となる導波路構造の作製に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
概要に示した通り、レーザー発振に十分なパーセル係数を満たす構造を見出すとともに、電磁界シミュレーションにより、ロス値を上回るゲイン値が得られることが確認できた。また、構造の作製方法として、転写プリント法により再現性良く、導波路構造を金基板上に転写することに成功した。さらに、金に転写した構造からプラズモンモードに起因すると思われる発光スペクトルの観測に成功した。以上より、予想した、進捗よりも進んだ成果を得ることに成功した。
シミュレーション上では、ロス値を上回るゲイン値が得られているが、金属界面への光の集中により、ロス値が大きい構造となっている。今後レーザー発振を観測するために低ロス化のための構造最適化を行っている。その構造によってレーザー発振観測を実現が期待される。さらには、ダイヤモンドNVの特長を活かし3次元ベクトルイメージング技術を開発することで、神経回路網の活動を3次元的に可視化可能とする技術開発を目指す。
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