研究課題/領域番号 |
22H01527
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
西中 浩之 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (70754399)
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研究分担者 |
上田 修 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (50418076)
池永 訓昭 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30512371)
蓮池 紀幸 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (40452370)
宮戸 祐治 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (80512780)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化ガリウム / 強誘電体 / ミストCVD / 高移動度トランジスタ / 単一ドメイン |
研究実績の概要 |
本研究では、酸化ガリウム(Ga2O3)の中で唯一分極をもつ強誘電体のκ-Ga2O3の高電子移動度トランジスタ(HEMT)を形成して、GaNを超える高周波デバイスが実現できるかどうかを明らかにする。その検討では、GaNを超える大きな分極を利用した高濃度の二次元電子ガスの実証、その二次元電子ガスを用いたHEMT動作の実証、強誘電体特性を利用したノーマリーオフ動作の実証、κ-Ga2O3の基礎物性の解明の検討を進める。 二次元電子ガスの実証に向けて、その基礎となるκ-Ga2O3の高品質な結晶成長についての検討を進めた。検討では基板のオフ角によるκ-Ga2O3の表面平坦性や結晶性の改善を試み、表面平坦性と結晶性が向上するオフ角を見出した。さらにε-GaFeO3基板上に格子整合するκ-(InxGa1-x)2O3の成長に成功した。ただ、このκ-(InxGa1-x)2O3をTEMにて転位などの解析を進めたところ格子整合しているにも関わらず、無数の転位が入っていた。これは高温での成長か冷却時に導入されたと考えている。κ-Ga2O3では同様の転位は導入されないため、In由来と考えられる。厚膜を形成する際には格子整合が重要となる。低温での成長や他元素の導入など検討して転位低減した格子整合系材料を探索する。 また、κ-Ga2O3はGa2O3の準安定相の一つであるが、準安定相の探索として存在が怪しまれていたδ-Ga2O3の形成検討を行った。ミストCVDと適切なバッファ層を利用することで初めてδ-Ga2O3の形成に成功した。これはGa2O3の安定相制御技術にとって大きな成果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
κ-Ga2O3の高濃度2DEGによるHEMTの実現に向けて、本年度はその成長に重要なκ-Ga2O3の高品質な結晶を得ることに成功している。また、予定していた格子整合するκ-(InxGa1-x)2O3の成長にも成功している。一方で想定していなかった格子整合しているκ-(InxGa1-x)2O3への無数の転位が観察された。予定ではこの格子整合κ-(InxGa1-x)2O3を基礎としてデバイスを形成する予定だったが、この無数の転位のために積層構造の形成が進んでいない。そのため、やや遅れていると判断した。また、単一ドメインのκ-Ga2O3の電気特性を評価しているが、基板のFeが膜中に拡散していることが分かった。このFeはキャリアを補償するため対策が必要である。 一方で準安定相の形成技術としては、存在が怪しまれていたδ-Ga2O3の形成に成功している。この成果はGa2O3の結晶成長の分野において大きな意義があると言える。 またκ-Ga2O3の物性解明に向けては、単一ドメインのκ-Ga2O3の転位解析やラマン分光などの評価を進めており、回転ドメインを持つ薄膜とは異なる結果が得られており、興味深い結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はκ-Ga2O3のヘテロ界面での2DEGの蓄積を検証するために基礎となるκ-Ga2O3の高品質化の検討を進めていく。特にFeのキャリアの補償の影響を防ぐために、Feの拡散の影響が出ない厚膜化の検討を行う。一方で厚膜化のためには格子整合系が必要であるが、現状のκ-(InxGa1-x)2O3では無数の転位が存在するため、厚膜化には向いていない。成膜条件の検討や格子整合する他の元素との混晶の検討などを行い、厚膜化を進めていく。その後ヘテロ接合を形成して2DEGの評価を進めていく。 また、κ-Ga2O3の物性解明に向けては、このε-GaFeO3基板上での結晶成長の解明として、臨界膜厚の評価や転位などの評価を進める予定である。さらにはミストCVDだけでなく、MBEやMOCVDなどの手法でエピタキシャル成長の検討を行い、手法による結晶成長の違いを明らかにしていく。すでにMBEやMOCVDを検討しているグループと共同研究を開始している。また、ラマン分光や発光特性などの評価も継続して行っていく。電気特性の解明に向けては不純物ドープなどの検討も行って、移動度やキャリア密度の評価を進める。
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