研究課題/領域番号 |
22H01539
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 伸行 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90282334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポテンシャル揺らぎ / デバイスシミュレーション / 電子輸送 / ボルツマン輸送方程式 / モンテカルロ法 / 不純物散乱 / ハートリー近似 / ポアソン方程式 |
研究実績の概要 |
揺らぎによって局所的に生じるクーロンポテンシャルの変調を長距離成分と短距離成分に分離し、ボルツマン輸送方程式とポアソン方程式にそれぞれの成分をあからさまに導入した。その結果、電子輸送計算で前提となるポテンシャルの自己無撞着結合を成分分離の観点のもとで明確化することに成功し、モンテカルロ法に基づいたシミュレーション手法の理論的フレームワークの再構築を行った。具体的な研究実績の内容は、以下の通りである。 (1) モンテカルロ法で想定されている長さのスケールが平衡状態での遮蔽長に対応することを理論的に明らかにし、空間的に局在した荷電粒子(電子および不純物)の長距離に渡る局所的ポテンシャル揺らぎをあからさまに導入するための理論的フレームワークを定式化した。本研究室の所有する自己無撞着モンテカルロ法に局所的に揺らいだクーロンポテンシャルを導入することで、ポテンシャル成分の分離に対する正当性を検証した。同時に、長波長極限で定式化されている既存モデル(ボルツマン輸送方程式の理論フレームワーク)を、ポテンシャル成分の分離の観点で見直すことで、輸送方程式に含まれるハートリー平均場が長距離成分に対応すること、従来手法では散乱ポテンシャルがダブルカウントされていること、を明らかにした。これらの知見をもとにして、ポアソン方程式と自己無撞着に結合したモンテカルロ法に基づいたシミュレーションフレームワークを再構築した。なお、モンテカルロシミュレータの構築を先行して今年度進めたことから、非平衡グリーン関数法に関する理論的フレームワークの再構築を来年度実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
来年度予定している内容の一部を先行して今年度実施したことから、一部の内容を来年度実施する。
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今後の研究の推進方策 |
局所的なポテンシャル揺らぎを導入するための非平衡グリーン関数法に基づく理論的フレームワークの見直しと新たなフレームワークの構築を今年度に引き続き行い、完成させる。そのうえで、非平衡グリーン関数法に基づいた新たなデバイスシミュレータ構築に向けた基礎検討を開始する。一方、今年度得られた知見をもとにして、デバイス構造を導入したモンテカルロ法に基づくデバイスシミュレータを完成させる。デバイス構造としては、近未来デバイスとして最有力と考えられているナノワイヤFET(Gate-All-Around)構造とする。これまでの研究実績(ポテンシャル成分の分離パラメータの明確化、ポアソン方程式に対するメッシュ幅や時間ステップの最適化に関する知見)をフルに活用することで、安定動作が可能なシミュレータの構築を目指す。
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