研究課題/領域番号 |
22H01543
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
佐々木 友之 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (90553090)
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研究分担者 |
伊藤 桂一 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20290702)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / メタマテリアル / 液晶 |
研究実績の概要 |
本研究では、液晶を内包する電磁メタマテリアルであるメタ液晶を独自に構想し、具現化するとともに、それによりテラヘルツ(THz)波の高速変調技術を切り拓く。申請者は、THz帯における伝搬制御素子に対する需要の高まりから、液晶を用いた動的THz素子に関する研究を行ってきた。その過程で、金属からなる等方的メタマテリアル中で液晶を配向させることにより、液晶単体では得られない程度に大きな複屈折が発現することを見出した。こういったサブ波長構造に起因する特異な電磁特性と、液晶由来の多様な外場応答性から、メタ液晶は各種THz波応用の高度化と普及を実現に導く革新的材料であると確信している。本研究では、このことを実証すべく、THz波のイメージング応用を対象とし、メタ液晶によって、50 fps程度のフレームレートで動作する電圧駆動空間THz変調器を開発する。また、高速通信応用に特化した、数十Gbit/s級の光駆動高速THz変調システムの創製にも挑む。 令和4年度は、当初の予定通り、メタ液晶の電磁物性を数値シミュレーションによって検討した。応用上重要な指標となる透過率と実効的なリタデーションが、メタ原子の寸法によってどのように変化するのかを系統的に計算し、メタ液晶がTHz帯における変調器用材料として有用であることを実証した。また、機械学習を用いたメタ液晶の構造探索についても検討を開始し、遺伝的アルゴリズムに基づくトポロジー最適化の手法が、メタ原子形状の設計に有益であることも実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、令和4年度中に、複数の最適化手法を相補的に活用し、メタ液晶の構造最適化の過程を物理的に考察することで、目標とする動作速度が実現可能なメタ液晶の設計手法を確立する予定であったが、そこまでには至っていない。計画段階での見込みがやや甘く、メタ液晶の基礎特性の把握に想定以上の時間を要したことが主たる原因である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、本研究課題における達成目標の一つである、電圧駆動THz変調器の開発に向け、令和4年度に引き続き、メタ液晶の特性を数値シミュレーションによって検討する。特に、電圧印加に用いる電極について、実現可能な構造を探索する。加えて、液晶、金属、誘電体基板等、使用する材料の損失も考慮したより詳細なシミュレーションも行い、実際の素子作製に向けた知見を得る。機械学習を用いた最適設計についても検討を継続し、リタデーションだけでなく、応答速度や損失も考慮した性能指数を評価関数とし、目標とする動作速度が実現可能なメタ液晶を設計する。 また、上記と並行し、当初の予定通り、メタ液晶による電圧駆動変調器の試作も開始する。金属サブ波長構造は、主としてサブフェムトインクジェット加工装置により行うが、その前段階として、導電性インクの種類、インクの吐出量、描画速度、重ね書き回数、基板の洗浄処理等の描画条件について実験的に検討する。この描画プロセスがある程度確立し次第、設計したメタ液晶の作製へと移る。得られたメタ液晶の構造は、レーザー顕微鏡、白色干渉顕微鏡、偏光顕微鏡等により観察し、THz帯における電磁物性は、THz時間領域分光システムにより評価する。
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