研究課題/領域番号 |
22H01551
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真田 篤志 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (20264905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 透明マント / マントルクローク |
研究実績の概要 |
まず、円筒座標系におけるマクスウェル方程式の境界条件から、平面波をTE入射させた場合の散乱抑制に必要な円筒マントルクローク表面の実効表面インピーダンスを解析的に求めた。次に、このマントルクロークに平面波入射させた場合の散乱波を計算し、本マントルクロークが散乱波を完全に抑制可能なことを解析的に示した。この表面インピーダンスは非零の正負の実部を持つため受動素子による実装は原理的には不可能であるため、表面インピーダンスの実部を零とした受動素子による実装の場合でも散乱波の抑制が最大となるよう誘電体基板の厚さと誘電率を数値的に最適化した。その結果、金属円筒の直径が2波長としても本受動マントルクロークが十分な抑制効果が得られることがわかった。 次に、数値シミュレーションによりマントルクロークのエレメント構造を決定した。設計では、誘電体基板としてCOP基板および伸縮性基板を想定し、数値シミュレーションにより単位エレメント構造と表面インピーダンスの関係を与えるデータベースを構築し、試作上の制限を考慮して試作構造を決定した。 続いて、設計した円筒クロークの散乱特性を数値的に求めた。先に示した単位エレメント構造パラメータを与えた場合、理論で予想した以上の散乱波が発生することがわかった。 さらに、より高い散乱抑制性能の実現のため、得られた単位エレメント構造パラメータの値を初期値として表面構造の数値的最適化を検討した。その結果、後方散乱において10dB程度の散乱抑制効果が得られた。本原因を理論的・数値的に解明しその物理的解釈を与えるとともに、前方への散乱波の抑制について現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、D帯における受動円筒クロークを設計し、数値最適化により解析的に求めた表面インピーダンスを与えた場合を上回る散乱抑制効果を確認した。これは本研究の研究目的である従来の散乱抑制限界を超えた散乱抑制効果を数値的に確認するものであり、計画通り引き続き実験的検証を行うことが可能となった。これにより研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、更なる散乱抑制のための表面構造の数値最適化を進め、その効果を実験的検証する。 まず、実証実験のため3次元電磁界スキャナ測定システムを作製する。このためD帯周波数変換モジュールと3次元ステージにより測定系を構成し、バイスタティック・レーダ断面積(BRCS)評価のための近傍界-遠方界変換ソフトウェアを作成する。 次に、最適化したマントルクロークをフォトリソグラフィにより作製し、その散乱特性を構築した電磁界スキャナ測定システムにより評価する。BRCSの測定結果を理論値および電磁界シミュレーションによる数値計算結果と比較し、クローク性能を評価する。 また、周波数特性や入射波の角度依存性、偏波依存性を測定し数値シミュレーション結果と比較し評価する。その際、試作誤差や評価誤差に対する評価を行う。試作誤差等を考慮しても実験的により期待した散乱抑制効果が得られない場合には、データベースの妥当性や基板内面内伝搬波を考慮した設計法の妥当性の検証を数値的に行い、再設計及び再試作によりその原因を追求する。
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