研究課題/領域番号 |
22H01554
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
東 清一郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (30363047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 非接触温度測定 / 半導体デバイス / 自己発熱 |
研究実績の概要 |
本研究は光学干渉非接触温度計測法(Optical Interference Contactless Thermometry : OICT)の原理を拡張し、半導体デバイス内部における熱拡散過程を三次元・マイクロ秒時間分解で可視化するOICTイメージング技術を構築するとともに、半導体デバイスの自己発熱が引き起こす特性劣化や、熱暴走に至る過程の熱的挙動を明らかにし、高信頼性デバイスのプロセス・設計・駆動法の指針提示に資する新たな計測技術の確立を目的とする。 2022年度はOICTによるデバイスの自己発熱過程を観測するための測定システムの構築をおこなった。デバイスにパルス電圧印加して発生した自己発熱を背面から測定するシステムを独自に設計・製作した。OICTを適用するために、赤外光と可視光の2種類の光学系を構築し、シリコンおよびシリコンカーバイドのどちらのデバイスにも対応できるシステムを構築した。実際にシリコンMOSFETを作製し、OICTによる自己発熱過程の観測を試みた。チャネル長500um、チャネル幅300umのn型MOSFETにゲート電圧5Vを印加しつつ、40V~120V、1秒のパルス電圧をドレインに印加した。80Vではチャネル全体での比較的対称な形状をした干渉縞が観測された。一方、120Vではドレイン端側に偏った干渉縞形状となり、ソース側に向かって三角形をした予想外の形状が観測された。以上のことから、OICTシステムの構築という当初目的は達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OICT測定システムはすべて独自に設計・製作した。デバイスをX-Yステージに設置し、上面からは光学顕微鏡でデバイスを観察し、プロービングをおこなう機構を設けた。一方、デバイス裏面(下面)側にOICT光学系を設置し、非接触温度測定が実行できるようにした。測定系はアルミフレームで製作したボックス内部に設置し、外部の電圧印加回路および電気特性測定用のソースメジャーユニット(SMU)と隔壁コネクタを介して接続できるように製作した。OICT光学系は、シリコンデバイス向けに波長1310nmの赤外レーザーをプローブ光とし、InGaAsのハイスピードカメラ(HSC)を用いて実時間の反射干渉像を計測するシステムとした。一方、シリコンカーバイドデバイス向けには633nmのHeNeレーザーを光源とし、シリコンCMOSのHSCを用いた。これら光学系は光学フレームに設置し、入れ替えることによっていずれのデバイスのOICTにも対応できる構成とした。 実際にシリコンMOSFETを作製し、OICTによる自己発熱過程の観測を試みた。チャネル長500um、チャネル幅300umのn型MOSFETにゲート電圧5Vを印加しつつ、40V~120V、1秒のパルス電圧をドレインに印加した。80Vではチャネル全体での比較的対称な形状をした干渉縞が観測された。一方、120Vではドレイン端側に偏った干渉縞形状となり、ソース側に向かって三角形をした予想外の形状が観測された。 以上の結果から、本年度の測定システムの構築という目的に関しては予定通り達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
OICTシステムを用いて、引き続きシリコンおよびシリコンカーバイドデバイスの発熱現象に関して、様々な印加条件で観測を実施する。観測した結果を解析しデバイス内の温度分布を調べ、特にこれまでシミュレーション等で報告されているものと異なる現象を探索する。更には、連続パルス印加実験により、長期的なストレスが加わることによって自己発熱過程にどの様な変化が現れるのかを調査する。デバイスシミュレーションによる計算との比較についても検討を開始する。シリコンカーバイドデバイスについては、MOSFETおよびショットキーバリアダイオード(SBD)の作製に着手し、これらを用いた回路動作の評価についても検討をすすめる。
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