研究課題/領域番号 |
22H01560
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
皆川 浩 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10431537)
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研究分担者 |
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60709723)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 低炭素型建設材料 / アルカリ活性材料 / 高炉スラグ / 凍結融解 / 塩害 / 鉄筋腐食 |
研究実績の概要 |
本研究では,低炭素社会に資する建設材料の創製のため,アルカリ活性材料(AAM)に着目し,その凍結融解抵抗性,遮塩性,鉄筋腐食抑制のメカニズムの解明を目的とする.凍結融解抵抗性はAAMの氷点下におけるペーストと骨材の膨張・収縮挙動の相違および空隙構造,遮塩性は塩化物イオンの固相への固定化能,鉄筋腐食抑制は材料の一つである高炉スラグに含有する硫黄成分の還元能力に起因する貧酸素雰囲気の形成が鉄筋の腐食速度に及ぼす影響に着眼した検討を行う. 今年度は,凍結融解時のペーストの膨張・収縮挙動を把握するために,5×5×10mmのペースト試験体を作製し,+20℃~-20℃の温度範囲でペースト試験体周辺の雰囲気温度を変化させ,熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analyzer:TMA)にてペースト試験体のひずみの時刻変化を追跡した.その結果,アセトン浸せき・減圧乾燥させたペースト供試体では,雰囲気温度の降下とともにペースト供試体の収縮が観測された.一方,減圧環境下で水中に浸漬させて脱気したペースト供試体では,雰囲気温度の降下とともにペースト供試体の収縮が観測され,さらに,-10~-15℃の範囲内では空隙水の凍結に伴う膨張が観測された.また,+20℃から-20℃に雰囲気温度を低下させ,再び+20℃まで雰囲気温度を上昇させるサイクルを最大3サイクルまで実施し,氷点下で降温させているときに生じた膨張量を測定したところ,サイクル間で明確な変化の傾向は確認されなかった. 以上より,ペースト供試体を用いて氷点下で降温させているときに生じる膨張量をTMAで定量できること,また,測定サイクルは1サイクルで十分であることが確認された.今後はこの手法を用いて,様々な配合条件のペースト供試体を評価し,凍結融解抵抗性に寄与する配合因子およびそのメカニズムの解明を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高含水率のペースト試験片を+20℃~-20℃に変化させた時のひずみの測定に関して,熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analyzer:TMA)導入後のパイロット試験を実施し,ひずみが適正に測定されることを確認するとともに,空隙水の凍結に伴うペースト試験体の膨張も観測することができた.これは研究目的を遂行するための実験方法を確立できたことを意味しており,概ね順調に研究が進捗していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
氷点下環境下でのペーストの膨張量を定量できる目途が立ったため,今後は評価対象とするアルカリ活性材料の配合を明確にする取り組みに着手する.配合パラメータとしてはアルカリ活性剤の種類および濃度,結合材の種類および配合比となる.配合パラメータの選定に際しては,建設材料において最も重要となる性能が圧縮強度であることに配慮し,実験対象とする各種の配合で圧縮強度が同等となる配合パラメータを探索する. また,研究目的の一つである鉄筋腐食抵抗性を評価するための試験体についても,具体の仕様を定め,暴露試験を開始することを目指す.この件についても対象とする配合を定める必要があるが,前者と同様に圧縮強度を同等とした種々の配合を探索する. このように,研究を推進するためには供試体の仕様を定めることがまず必要になるが,本研究の材料供給メーカーからの情報も参考にして,仕様の選定を進める.
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