研究実績の概要 |
コンクリート構造物中の鉄筋の腐食は,部位による水掛かり等の局所的な環境条件の影響を受けるが,実構造物においてそれを定量的に評価する手法は確立されていない.そのような背景から,本研究は構造物各部位における局所的な環境作用を劣化予測や耐久性評価に反映させるため,薄板モルタル供試体の暴露試験結果に基づいて,鋼材腐食に関連する4物質(水,酸素,二酸化炭素,塩化物イオン)の供給条件を定量評価し,それらのコンクリート中での移動現象を解析するための境界条件を設定する手法を開発することを目的している.令和5年度は下記の検討を行った. 昨年度に作製した鉄筋コンクリート大型模擬供試体(T桁,箱桁)を屋外暴露し,内部に埋め込んだセンサにより内部環境と鋼材腐食状況を継続してモニタリングした.表面各部に貼り付ける薄板モルタル供試体の中性化深さ測定値から再現した劣化環境作用を境界条件として劣化予測を行い,開発した手法の検証と改良のためのデータを取得した.その結果,下記の成果が得られた. (1)実環境においては短期的な水掛かりではなく, 湿度や長期的な水掛かりの傾向によって, コンクリ-ト内部の含水率が変動し, それに伴って腐食電流が変化していることが確認された. (2)鉄筋位置の液抵抗と腐食電流密度の間に高い相関があることが確認された.このことからコンクリ-ト内の含水状態から腐食電流密度を把握できると考えられる. (3)供試体各部位における薄板モルタル供試体の中性化深さと腐食量の間に負の相関が確認され, 構造物各部位の中性化深さから水掛かりを把握し, 各部位の鉄筋腐食を予測できる可能性が示唆された.
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