研究課題/領域番号 |
22H01582
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 聡 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70470127)
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研究分担者 |
所 哲也 北海学園大学, 工学部, 准教授 (40610457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 地盤凍結 / 地盤材料 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高圧環境下での凍結・掘削(応力解放)・シールド構築(応力回復)・融解といった一連のプロセスに伴う地盤変形と安定性を一貫して評価する技術体系を構築することである。このため、凍土挙動の真の拘束圧依存性など、理解が未だ統一されていない古来の問題に対し、不凍水分量計測と応力・温度経路制御を合わせた室内力学試験でアプローチするとともに、熱・水・土骨格(THM)連成理論に基づくモデル化を発展させ、その運用のための物性評価法と合わせたパッケージ創出に向けて研究を進めてきた。初年度の成果としては、凍結時の強度特性の基礎研究とその実務的な定量化法について大きな進展が見られ、過圧密粘土の凍結時強度特性の解明に加え、引張強度に関する新しい独創的な試験法・理論を提案し、後者については地盤工学の最高権威ジャーナルであるGeotechniqueに公表するに至った。また、凍結・融解による土の構造変化・塑性変形に関して自身が提案したモデルを、同じく自身で構築した熱・水・土連成有限要素コードに実装し、凍結・融解試験を良好に再現することに成功した。それに必要なモデルパラメタを、塑性指数などの簡易指標から推定するためのデータベース構築も進めた。同時に、北海道大学内の施設を利用し、凍結・融解に伴う微視構造の変化を水銀圧入ポロシメトリや電子走査顕微鏡で分析し、新規の知見を得た。これらは地盤工学会やその北海道支部での国内発表に加え、さらに内容を拡充させたものを今年(2023年)の2つの国際会議で発表予定である。その他、研究計画に従い、核磁気共鳴(NMR)装置による不透水分量推定試験も準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究調書作成時から、当初研究分担者となる予定であった研究者1名が海外に異動となり研究グループから外れたため、当初計画した8つのタスクのうち凍上時の側圧計測という1タスクの実施が保留となっている。しかし、他のタスクにそのエフォートを充てているため、上記実績の通り、全体として研究は順調に進展している。特に、新世代の地盤凍結工法の設計において重要と考えられる引張強度特性については、過去になかった極めて独創的な結果が得られたと考えている。熱・水・土連成有限要素解析についても、二次元境界値問題を安定して解く段階にまでコード実装が進んでおり、令和5年度より、過去の模型試験などを解析する準備が整っている。核磁気共鳴による不透水分量推定試験は、低温室の動作不良と、それに伴う恒温水槽の故障(結露による基盤腐食)によりおよそ3か月の中断を余儀なくされ、令和4年度には当初計画していた進展が見られなかった。現在では全装置復旧し、この遅延は十分に補填可能である。
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今後の研究の推進方策 |
申請時調書に記したタスク①~⑧のうち、①③④⑤については順調に進んでおり、令和5年度もこれらのタスクを継続して行う。 ①凍結三軸装置の更新(高圧化・低温化)および一般条件下での拘束圧依存性の評価:現在用いている高塑性粘土に加えて低塑性粘土も試料として用い、三軸圧縮試験・引張試験を実施し、③のモデルの実証を行う。③THM連成凍土モデルの発展:①より特に引張試験に関して非常に貴重なデータが得られ、独創的な力学モデルの概念が生まれたため、その定式化を行い⑤の有限要素解析に実装する。④一次元凍結・融解試験とFTRLモデルパラメタの同定、データベース化:前年度は凝灰質粘土や洪積粘土など自然固結・自然過圧密の土質に対し、従来よりも広い応力範囲・温度で検証することでモデルの一般性を検証することに成功した。令和5年度はさらに検討対象土質を拡大するとともに、水銀圧入試験による間隙構造推定などを通してミクロスケールでの分析を行い、モデルの科学的基礎の確立を目指す。⑤THM連成有限要素解析コードへの③④の実装:令和4年度にコーディングはほぼ完了したが、解析アルゴリズムの改善を通して数値的により安定した解を出力できるようさらに開発を進める。 残りのタスクのうち②(核磁気共鳴による種々の凍土中の不凍水分量の同定)は恒温装置の故障からの復旧に時間を要し、1年目はほとんど成果を得られなかったが、現在は完全に復旧したため、調書の計画に沿ってタスクを進めていく。 2~3カ年目のタスクとして予定していた⑥~⑧について、令和5年度から着手を始め、令和6年度に本格化できるよう準備を進める。 ⑥側圧計測高圧一次元凍結試験⑦大深度トンネル実断面・施工プロセスを反映した解析の実施⑧THM連成および非連成フレームワークにおける物性パラメタ同定法の策定
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