• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

岩盤内亀裂生成後の長期透水性変化の実像を導くマルチスケールシミュレータの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22H01589
配分区分補助金
研究機関大阪大学

研究代表者

緒方 奨  大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50868388)

研究分担者 清水 麻由子  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 地層処分研究開発推進部, 研究職 (10751191)
岸田 潔  京都大学, 工学研究科, 教授 (20243066)
中島 伸一郎  山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70346089)
安原 英明  愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70432797)
福田 大祐  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80647181)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードミクロスケールの岩石亀裂生成解析 / GPGPU並列計算 / 岩石亀裂生成解析の高速化 / 鉱物分布モデル / 亀裂のミクロ構造 / 亀裂内マルチフィジックス現象 / 亀裂の透水性変化 / 岩石鉱物の溶解・沈殿
研究実績の概要

本年度の実施内容を以下に記す。
■(A):高速かつ高精度なミクロスケール亀裂生成解析を確立すべく、ベースとなるFEM-DEM統合解析手法(FDEM)の改良を行った。従来のFDEMでは、応力計算精度の劣化が生じる懸念が報告されているため、正確な応力計算が可能な亀裂生成モデルECZMを導入した ECZM-FDEMの適用が望ましい。しかし、既存のECZM-FDEMでは、亀裂挿入過程においてリメッシュ処理が必要であり並列計算による高速化が困難であった。そこで、リメッシュ処理を回避するアルゴリズムを実装したECZM-FDEMを開発し、GPGPU並列まで搭載した。これにより、従来のECZM-FDEMに対し大幅な計算高速化(優に200倍以上)を達成した。
■(B) :JAEAの瑞浪超深地層研究所で採取された花崗岩に対するX線CT撮影と画像解析を行い抽出したミクロな鉱物分布を反映した解析モデル(GBM)を構築した。そして、そのGBMを(A)の成果と融合させた、ミクロスケール亀裂造成解析手法を創成した。この解析手法を用いて、土岐花崗岩を用いた圧裂試験の再現計算を行い、鉱物分布に依存した亀裂進展を再現できることを確認した。
■(C) :本研究では、亀裂生成解析モデルに加え、ミクロ構造に依存した亀裂内マルチフィジックス現象を記述する亀裂構成モデルの構築も行う。今年度は、モデル構築のために実施予定である室内実験(温度・拘束圧・pH制御下での岩石亀裂透水試験及びX線CT撮影によるその場観察)の機構を概ね完成させた。
■(D) :さらに、ミクロ構造に依存した亀裂内マルチフィジックス現象を記述する亀裂構成モデル構築の予備検討として、鉱物沈殿が活発に観察された既往の花崗岩亀裂への模擬海水を用いた透水試験の結果に基づき、ミクロな鉱物溶解・沈殿がもたらす亀裂のマクロな透水性変化を記述するモデルを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画において本年度は、(1)ミクロ構造レベルで亀裂生成形態を予測する亀裂生成解析モデルの構築、(2)ミクロ構造に依存した亀裂内マルチフィジックス現象を記述する亀裂の構成モデルの構築、という二つの研究課題に取り組む計画であった。
(1)の課題について当初計画では、今年度内に(1-1)【微視構造観察による岩石の鉱物分布抽出】、(1-2)【力学試験の実施と亀裂のミクロ構造の定量評価】、(1-3)【ミクロスケール亀裂生成モデルの構築と力学試験の再現解析】の三つのサブ課題を実施する予定であった。結果として今年度は、この(1-1)~(1-3)のサブ課題の内容を一通り全て実施するとともに、当初想定していなかったレベルの亀裂生成解析の高度化(解析の高精度化・高速化)を実現できた。
(2)の課題について当初計画では、今年度内に(2-1)【温度・圧力・化学条件を制御した岩石亀裂透水試験とその場観察】のサブ課題を開始するとともに、得られた計測・観察結果を活用し、(2-2)【ミクロ構造に依存した亀裂内マルチフィジックス現象を記述する亀裂の構成モデルの定式化】のサブ課題に着手する予定であった。結果として今年度は、(2-1)の実験を本格的に開始し計測・観察結果を新たに取得するまでには至らなかったものの、既往の花崗岩亀裂透水試験で得られている範囲のデータを利用し、(2-2)のサブ課題における構成モデルを今後完成させていく上で重要となる部分(ミクロな岩石鉱物の溶解・沈殿反応の発生挙動とそれが亀裂のマクロな透水性変化に与える影響)の定式化を概ね完了できた。
上記の通り、今年度実施予定であった(1)と(2)の研究課題の内、(2)の課題については、当初の予定より一部の内容で若干遅れがみられるものの、(1)の課題については、当初想定を超える成果が得られており、総合的には研究は概ね順調に進捗していると判断した。

今後の研究の推進方策

①ミクロ構造レベルで亀裂生成形態を予測する亀裂生成解析モデルの高度化:今年度は、構築した亀裂生成解析モデルが鉱物分布に依存した亀裂生成経路等を概ね再現可能であることを実験との比較を通じ確認できた。今後は、開口幅や接触部の分布といったミクロ構造レベルのより詳細な亀裂生成形態を再現すべく3D鉱物分布モデルや鉱物境界での亀裂進展開口計算の改良を図っていく。
②亀裂透水試験とX線CTによるその場観察の実施:今年度整備した実験機構を用いて、単一亀裂を有する土岐花崗岩や幌延泥岩への透水試験及びX線CTによるその場観察を数日~数か月スパンで実施し計測・観察データを蓄積していく。
③ミクロ構造に依存した亀裂内マルチフィジックス挙動を記述する構成モデルの構築:②の亀裂透水試験とX線CTによるその場観察より得られた、時々刻々と変化する単一亀裂全体としてのマルチフィジックスな応答とその亀裂内のミクロ構造の特性値との間の構成関係の定式化を試みる。
④亀裂のミクロ構造を考慮可能なマルチスケール・マルチフィジックスシミュレータの構築・検証:①と③において開発されるモデルを代表者が開発してきたメゾ~マクロスケールの連成解析コードに実装し、亀裂のミクロ構造を的確に考慮した上でマクロな岩盤に対する長期挙動予測解析を実現する革新的マルチスケール・マルチフィジックスシミュレータを構築し、室内・現場実験との比較よりシミュレータの妥当性を検証する。
⑤シミュレータの妥当性検証と地層処分環境を想定した予測解析:最後に、④において構築・検証されたシミュレータを用いて地層処分環境を想定した条件下で岩盤の長期透水特性を数万年オーダーで予測解析を行う。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Multi-physics numerical analyses for predicting the alterations in permeability and reactive transport behavior within single rock fractures depending on temperature, stress, and fluid pH conditions2022

    • 著者名/発表者名
      Ogata Sho、Nishira Eita、Yasuhara Hideaki、Kinoshita Naoki、Inui Toru、Kishida Kiyoshi
    • 雑誌名

      Soils and Foundations

      巻: 62 ページ: 101207~101207

    • DOI

      10.1016/j.sandf.2022.101207

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of hydraulic fracturing simulator based on explicit and implicit methods2022

    • 著者名/発表者名
      Yutaro Maeda, Sho Ogata, Daisuke Fukuda, Hideaki Yasuhara, Toru Inui
    • 雑誌名

      The proceedings of CouFrac2022

      巻: No. 165 ページ: 1-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Coupled THMC Simulation Based on Explicit Fracture Representation Using Extrinsic Cohesive Zone Model2022

    • 著者名/発表者名
      Ogata S.、Maeda Y.、Fukuda D.、Yasuhara H.、Inui T.、Kishida K.
    • 雑誌名

      Proceedings of 56TH US ROCK MECHANICS / GEOMECHANICS SYMPOSIUM

      巻: ARMA-2022-0642 ページ: ARMA-2022-0642

    • DOI

      10.56952/arma-2022-0642

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Numerical analyses of coupled thermal-hydraulic-mechanical-chemical processes for estimating permeability change in fractured rock induced by alkaline solution2022

    • 著者名/発表者名
      Ogata Sho、Yasuhara Hideaki、Kinoshita Naoki、Inui Toru、Nishira Eita、Kishida Kiyoshi
    • 雑誌名

      Geomechanics for Energy and the Environment

      巻: 31 ページ: 100372~100372

    • DOI

      10.1016/j.gete.2022.100372

  • [雑誌論文] Modeling the shearing behavior of discontinuous rock mass incorporating dilation of joint aperture2022

    • 著者名/発表者名
      Zhang Jintong、Kikumoto Mamoru、Yasuhara Hideaki、Ogata Sho、Kishida Kiyoshi
    • 雑誌名

      International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences

      巻: 153 ページ: 105101~105101

    • DOI

      10.1016/j.ijrmms.2022.105101

  • [学会発表] 亀裂表面形状を考慮した透水ー反応輸送解析による模擬海水中での岩石亀裂の透水性変化予測2022

    • 著者名/発表者名
      西羅瑛太, 緒方奨, 安原英明, 木下尚樹, 乾徹, 岸田潔
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 垂直拘束圧条件下における岩石亀裂面挙動評価手法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎友星, 緒方奨, 安原英明, 木下尚樹, 佐古大地, 乾徹
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 開口幅と固着の影響を考慮した岩石不連続面せん断モデルー定式化と適用性2022

    • 著者名/発表者名
      松岡勇樹, 菊本統, 緒方奨, 岸田潔
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] Extrinsic Cohesive Zone ModelをベースとしたハイブリッドFEM-DEM解析の並列化2022

    • 著者名/発表者名
      前田悠太朗, 緒方奨, 福田大祐, 乾徹
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 熱―流体ー力学連成モデルによる三次元地熱流体流動解析2022

    • 著者名/発表者名
      前原崇志, 緒方奨, 福田大祐, 乾徹
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 稲田花崗岩の室内水圧破砕実験と鉱物分布を考慮した解析モデルの検討2022

    • 著者名/発表者名
      佐古大地, 緒方奨, 安原英明, 木下尚樹
    • 学会等名
      第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 地熱資源開発やエネルギー生成後の副産物地下貯留に関する熱-水理-力学-化学連成数値 シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      緒方奨
    • 学会等名
      第6回 COMSOLを用いたカーボンニュートラルを支援するためのCAEセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 陽解法-陰解法連成解析法を用いた水圧破砕解析2022

    • 著者名/発表者名
      緒方奨, 前田悠太朗, 福田大祐, 陳友晴
    • 学会等名
      日本地熱学会令和4年学術講演会
  • [学会発表] 亀裂性岩盤における熱-水理-力学-化学連成場を解くマルチフィジックスシミュレータの開発2022

    • 著者名/発表者名
      緒方奨
    • 学会等名
      日本機械学会M&Mカンファレンス
  • [学会発表] 損傷理論を用いた大土被り条件下の掘削解析における側圧係数の影響2022

    • 著者名/発表者名
      三好 航平, 緒方 奨, 安原 英明, 岸田 潔
    • 学会等名
      第57回地盤工学発表会
  • [学会発表] 岩石不連続面のせん断強度回復のモデル化とパラメータの検討2022

    • 著者名/発表者名
      松岡勇樹, 菊本統, 緒方奨, 張晋通, 岸田潔
    • 学会等名
      第57回地盤工学発表会
  • [学会発表] 垂直拘束圧条件下における岩石亀裂構造評価手法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎友星, 緒方奨, 安原英明, 木下尚樹, 佐古大地, 乾徹
    • 学会等名
      2022年度土木学会関西支部年次学術講演会
  • [学会発表] 陽解法と陰解法を連成した岩石の水圧破砕シミュレータの開発2022

    • 著者名/発表者名
      家永凌冴, 緒方奨, 前田悠太朗, 乾徹
    • 学会等名
      2022年度土木学会関西支部年次学術講演会
  • [学会発表] 割れ目の開口幅を考慮した岩石不連続面のせん断シミュレーションとパラメータの分析2022

    • 著者名/発表者名
      松岡勇輝, 菊本統, 緒方奨, 岸田潔
    • 学会等名
      2022年度土木学会関西支部年次学術講演会
  • [学会発表] 陽解法-陰解法連結計算による水圧破砕解析手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      家永凌冴,緒方 奨,前田悠太朗,福田大祐,乾 徹
    • 学会等名
      日本材料学会第71期学術講演会
  • [学会発表] 垂直拘束圧条件下での花崗岩亀裂の開口幅・接触状態評価2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎友星,緒方 奨,安原英明,木下尚樹,佐古大地,乾 徹
    • 学会等名
      日本材料学会第71期学術講演会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi