研究課題/領域番号 |
22H01590
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
乾 徹 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90324706)
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研究分担者 |
緒方 奨 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50868388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 循環資材 / 溶出 / 六価クロム / 物質移行解析 / 環境安全性 |
研究実績の概要 |
本研究は,セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石等の循環資材からの微量の六価クロム(以下,Cr(VI))の溶出,ならびに2022年4月に実施された地下水環境基準におけるCr(VI)の基準値強化を背景として,1) これらの循環資材からのCr (VI)溶出量の時間変化,最大溶出可能量の特性化,2) Cr(VI)の溶出特性・移行特性に基づく実効性の高い対策工の提示を通して,循環資材の有害物質の環境負荷量に基づいた環境安全性の判定基準の構築と適切な利用シナリオの提案を図るものである。 上記1) の観点では,Cr(VI)の溶出が懸念され,かつ利用量の多い廃コンクリート再生砕石と セメント系固化材による軟弱土(粘性土,火山灰質粘性土)の改良土を対象としてCr(VI)溶出挙動のキャラクタリゼーションを目的とした文献調査,実験的検討を実施した。実験にいおいては,セメント改良土を対象とした長期拡散溶出試験,および最大溶出可能量の評価結果に基づいて,セメント改良土からのCr(VI)溶出に関する実効拡散係数の同定を行った。廃コンクリート再生砕石については,有意な溶出が確認されたことから,貧配合のセメント改良土と混合することにより,セメント改良土の支持力・変形特性の改善,および再生砕石からのCr(VI)の溶出速度を抑制する効果を明らかにした。 上記 2) の観点では,既往研究においてセメント改良土から溶出したCr(VI) による地下水汚染が観測されていないことに着目し,地下水中の還元物質の存在がCr(VI)の移動性に及ぼす影響を室内試験により評価した。その結果,二価の鉄イオン濃度の上昇によって土壌のCr(VI)分配係数が数倍に上昇し, Cr(III)に還元された画分や,固相に吸着されたCrが存在することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石等の循環資材からの微量の六価クロム(以下,Cr(VI))の溶出挙動のキャラクタリゼージョンを目的とした検討については,研究協力者からの数多くの実験データの提供や文献調査の結果,溶出特性に影響を及ぼす要因や溶出量の分布について傾向を整理した結果をレビューとしてまとめ,論文投稿するべく準備を進めている段階であり,計画通りに進んでいる。さらに,溶出速度の実験的評価についてはセメント改良土の物性値や配合,最大溶出可能量と溶出速度の関係について,データの蓄積を進めており,計画通りの進捗が得られている。また,コンクリート再生砕石についても同様の検討を開始して,データの取得を進めている。 一方でCr(VI)の溶出特性・移行特性に基づく実効性の高い対策工の提示を目的とした研究については,実際にこれらの材料から溶出したCr(VI)による地下水汚染が確認されていないことから研究方針をやや軌道修正し,帯水層で想定される環境条件下におけるCr(VI)の移行特性の評価に注力をしている。2022年度は上述したように一定の成果が得られているものの,室内試験における還元的環境の再現等に時間を要したために計画した内容の実験が完了していない。よって,この観点においては当初計画と比較してやや遅れが生じている。 以上のことを総合的に考慮し,「おおむね順調に進展している」との自己評価としている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的である,セメント改良土,解体コンクリートから製造される再生砕石等の循環資材を対象とした環境安全性の評価基準と利用シナリオを提示に向けて,これらの材料からのCr(VI)溶出量の溶出速度と時間変化、最大溶出量のキャラクタリゼーションを目的とした実験的検討を前年度から継続して実施する。さらには、実際の地下水環境への影響を評価する際に必要となる,周辺地盤によるCr(VI) 吸着作用、特に帯水層で期待される還元的環境下におけるCr(VI)の移行特性について、室内試験によりその機構と影響の程度を明らかにする。 前者の観点については,2022年度の成果に基づいてCr(VI) の溶出が懸念される地盤材料を対象に、①即時的に溶出が収束する材料、②平均的に溶出が継続する材料、③材料劣化による溶出が懸念される材料(最大溶出可能量と比較して溶出試験での溶出量が低い材料)等に類型化を行い、溶出総量に着目してCr(VI)溶出特性を類型化する。さらにこれらの溶出特性を適切に評価するための室内試験方法を、材料の透水性に応じて提示し,試験結果に基づいて,間隙水への溶出濃度を推定する手法の確立とその検証を行う。 一方、周辺地盤中のCr(VI)の移行特性の観点からは、Cr(VI) の存在形態に影響を及ぼしうる、帯水層中の溶存物質や還元的環境を再現した環境で移行特性を評価し、既存の方法での結果との比較検証を行う。得られた実験結果は地球化学コードと物質移行解析を連成させた数値解析手法を用いて再現解析を行い、環境負荷の低減効果の定量的評価を行い,代表的な土質材料についてデータを蓄積する。
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