研究課題/領域番号 |
22H01597
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下園 武範 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70452042)
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研究分担者 |
松葉 義直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (90975351)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 長周期波 / 遡上 / 現地観測 |
研究実績の概要 |
高波浪時に海岸で発達する長周期波の実態を解明するため現地観測を実施した.現地観測は駿河湾奥の富士海岸を対象とし,前年度に検討・構築した映像観測系および海底観測系を用いて台風期にあたる2023年8月末~10月末の2か月間に実施した.台風による高波浪に対して万全の準備・態勢で臨んだものの,観測期間中に台風やその他の要因による著大な高波浪イベントは生起せず,観測期間中の最大有義波高は2mを上回る程度であった.海底での観測によって長周期波の生成を捉えることはできたが,海岸遡上は小さく映像観測により詳細な沿岸波浪挙動を捉えることはできなった.前年度に得られたデータと合わせて観測結果を整理・分析し,長周期波に関するモデル検証のためのデータセットを整備した. 現地観測と並行して数値計算による長周期波生成・伝播過程の検討を行った.過去に研究実績のある複数の海岸を対象として,長周期波が発達しやすい波群性の高い波浪の外洋での生成・伝播過程について位相平均波浪モデルによる広域的分析を行った.どのような物理過程が波群性の高い不規則波の来襲に影響するかを数値実験によって明らかにした.海岸での長周期波の生成過程については,位相解像型の波浪モデルを用いて前年度に得られた観測ケースの再現計算を実施して,モデルの精度検証を行った.対象とした長周期波は規模の小さいものであるが,定量的にも妥当な結果が得られることを確認できた.また,位相解像型のモデルについては長周期波生成において重要な物理過程である砕波をより任意性の少ない形で再現する新たなモデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地観測期間中に高波浪イベントが生起しなかったため,期待していた現地観測データを十分に収集することができなかった.このような事態を想定して計画を立てているものの,研究進捗の遅れにつながったことは否めないため上記のように判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続いて現地海岸で高波浪に合わせた機動的観測を実施するが,観測可能なエリアで高波浪イベントが生起しない可能性も想定される.過去にデータの蓄積のある高波浪イベントや,長周期波が関与したと考えられている歴史的波浪災害にも対象を拡げ,位相解像型波浪モデルによる再現計算を通して検証ケースを構築する.その上で,これまでに得られた知見を統合して実用的な海岸長周期波の影響評価手法を構築する.
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