研究課題/領域番号 |
22H01602
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 卓也 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20647094)
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研究分担者 |
内田 龍彦 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00379900)
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
鳩野 美佐子 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40837019)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ニックポイント / 滝 / 岩盤 / サイクリックステップ / 水理実験 |
研究実績の概要 |
近年,度重なる豪雨により,砂礫層の下にある基盤岩層が露出する河川が増加している.脆弱な岩盤が露出した河川では,遷急点またはニックポイントと呼ばれる滝の上流移動により,河床が急激に低下する事例が報告されている.これまでニックポイントは,滝壺の拡大によってオーバーハング部が崩落することで上流へ移動すると考えられてきた.しかし,最新の研究によって,滝壺は砂礫の堆積によって保護されるため一定以上大きくならず,従来の説ではニックポイントの大規模移動を説明できないことが明らかになった.本研究は,ニックポイントの上流側に新しい滝壺が自己形成され,連続的に更新されることにより大規模な上流移動を引き起こすという新たな仮説のもと,その発生条件と物理機構の解明を試みる. 岩盤上の周期ステップ地形は,流れが射流の時に形成されるため,ステップ形成を伴う滝の移動についても,上流の接近する流れが射流の場合を対象に検討されてきた.そこで,研究1年目は,滝の上流側水路の勾配を変化させ,等流状態では常流になるような緩勾配の場合,ステップを伴う滝の更新型移動が発生しないかを水理実験により調査した. 実験の結果,本来常流になるような緩勾配においても,流れが滝に接近するにつれて,常流から射流へ遷移することが確認された.これは,滝のリップにおいて流れが河床と剥離し,圧力が低下することにより,滝の上流側の流れも加速されるためである.加えて,滝の上流側水路が緩勾配でも,滝近傍において流れが部分的に射流になるため,ステップを伴う更新型移動が発生することが確認された.このことは,滝の更新型移動が,急勾配河川だけでなく比較的緩い勾配の河川でも発生する可能性を示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において,研究1~2年目は,フルード数と土砂供給量をパラメータとした体系的な実験を行い,更新型移動の発生条件を把握することを目的としている.今年度は,滝の上流側に異なる勾配を与えることで,上流側のフルード数を変化させ,それによる更新型移動の発生状況が確認できた.以上のことから,研究は概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は,土砂供給を変化させた場合の更新型移動の発生状況を確認する.また,滝の更新型移動を再現可能な数値解析モデルの構築を試みる.本研究では,流れの解析に非静水圧急変流場の底面流速が解析できるGBVC法を採用する予定のため,滝のリップ周辺で発生した圧力低下とそれに伴なステップの形成も再現できると考えられる.
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