研究課題/領域番号 |
22H01612
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤見 俊夫 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40423024)
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研究分担者 |
佐藤 弥 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, チームリーダー (50422902)
渡邉 正英 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50434783)
星野 裕司 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (70315290)
川畑 拓矢 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 室長 (80354447)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | fMRI / CG / VR / 災害 |
研究実績の概要 |
防災・減災において、人は減災行動の必要性を頭では理解していても実際には行動に移さないことが大きな問題になっている。その理由として、人は危険情報を理性・意識的な高次ルートと情動・無意識的な低次ルートの両方を通じて受け取ることで恐怖を感じるという心理・神経メカニズムを有しているにもかかわらず、現社会の災害情報の伝達手段は高次ルートに偏っていることが考えられる。つまり、自然災害の危険性について雨量や警報などの高次ルートから伝達されている一方で、情動・無意識的な低次ルートでは屋内の平穏な眺めが伝わっているため、人は災害の危険性を心の底から実感できないと推察される。そのため、災害の危険性が雨量や警報など理性による解釈を必要とする言語・数値情報として伝えられるだけでは減災行動に至るまでに不十分であり、情動に直接訴えかける動画情報を併せて提示することが減災行動を促すのに効果的であると予想される。この仮説を検証するため、災害危険性の情報伝達方法として①数値・言語情報と危険度マップ、②動画を用いたとき、人の活性化する脳部位が異なるかどうか、また、その活性化部位の違いによって人の判断・行動の違いを説明できるかについて、fMRIを用いて検証したい。その第一歩として、本研究では5名の被験者を対象としたプレ実験を行い、その結果を分析した。その結果、楔前部、海馬傍回、海馬、帯状回など、災害を我がことと考えているときに機能する部分が活性化していることが示唆された。また、高潮氾濫のCG動画を仮完成させ、海岸工学の専門家にコメントをうけて、現在最終版を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
防災・減災の意図-行動ギャップを解消するためには、科学的に予測される災害状況をコンピュータ・グラフィックス(CG)写真やCG動画で伝えることで、災害に備えるための適切な感情を引き起こすことが効果的だと考えられる。CG写真やCG動画は認知的解釈を必要とせず、視覚や聴覚から直接的に危険性を伝達する低次ルートを通るため、その災害の危険性に相応しい適切な感情を引き起こすと予想される。現在、そうしたCG動画を作成中である。ただし、本研究では、恐怖を煽ることで減災行動を促すのではないことを強調したい。災害に対する「適切な感情」を喚起するためには、ハザードマップの想定災害など科学的予測を反映したCG写真やCG動画を用いるべきと考えている。また、fMRI実験のプレ実験として、本研究では5名の被験者を対象としたfMRI実験を行い、その結果を分析した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水害の危険性を数値・言語・地図で伝える通常の情報提供に加えて、CG写真やCG動画でも水害の危険性を伝えた場合に、どれほど減災行動が促進されるかをランダム化比較試験により検証することを目的としたCG写真・CG動画の作成を進める。また、fMRI実験を行うための実験計画の立案や、被験者の勧誘などを進め、来年度のfMRI実験の格実施に向けた準備を行う。
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