研究課題/領域番号 |
22H01620
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大村 達夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 名誉教授 (30111248)
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研究分担者 |
佐野 大輔 東北大学, 工学研究科, 教授 (80550368)
渡辺 幸三 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80634435)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 下水疫学 / ウイルス / 機械学習 |
研究実績の概要 |
【テーマ1 下水からの病原ウイルスゲノムの網羅的で効率的な新規回収技術の開発】低速で20分間連続採取したサンプルから抽出したRNAは、表面のゴミによりサンプルが詰まることが多いグラブサンプリングと比較して、その後の濃縮・抽出効率が高まった。また、抽出した病原ウイルスゲノムの網羅的解析を行う際の前処理としてfragmented and loop primer ligated dsRNA sequencing(FLDS)法を採用し、2本鎖RNAウイルスであるロタウイルスとφ6に適用したところ、ビーズビーターによる破砕による遺伝子断片化について、ウイルス種ごとに最適条件が異なることが判明した。
【テーマ2 未知ウイルスと既知ウイルス変異株の人への感染性を評価する機械学習モデルの開発】下水中の多様なウイルスのゲノム配列に基づいて、各ウイルスの宿主を推定する機械学習モデルを継続した。宿主推定シグナルとして宿主とウイルス間の配列組成の類似性およびタンパク質間相互作用に着目した。宿主予測には、人獣共通感染症の分類に十分なデータが必要であるため、この研究ではPPIの代わりにゲノム配列組成に着目した。最初の機械学習はナイーブベイズで行われ、20セットの塩基配列由来の特徴を固定k-merで学習した。
【テーマ3 パンデミックを引き起こす可能性がある未知ウイルスと既知ウイルスの変異株の下水からの検知システムの確立と検証】仙台市内の下水から新型コロナウイルスのスパイクタンパク質遺伝子配列を高い陽性率で増幅するプライマーセットを新たに開発して適用したところ、定量PCR陽性サンプルから300塩基長程度の産物を約80%の陽性率で得ることに成功した。得られたPCR産物に対して次世代シーケンシングを行ったところ、比較的新しい株が有する遺伝子変異を検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つのテーマについて、それぞれ実施計画に沿っておおむね順調に研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
下水からの病原ウイルスゲノムの網羅的で効率的な新規回収技術の開発では、濃縮下水からウイルスに由来する核酸を選択的に抽出・精製し、ヒト感染性に関与するゲノム特性を検知するために、次世代シーケンシング解析の適用を試みる。未知ウイルスと既知ウイルス変異株の人への感染性を評価する機械学習モデルの開発では、最適な機械学習アルゴリズムの探索を継続すると共に、ゲノムを構成する塩基、コドン、アミノ酸に関する頻度以外のパラメータも追加してゲノム特性の把握を試みる。
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