研究課題/領域番号 |
22H01630
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
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研究分担者 |
前田 憲成 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (00470592)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 栄養塩除去 / 硝化 / セレクタ / 毒性 / 亜硝酸型硝化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、都市下水の生物学的排水処理に必要な酸素を最小化するとともに下水汚泥由来のメタン資源を最大化する新たな省資源システムの必須構成要素を開発することにある。具体的には、亜硝酸酸化細菌のメタボリックセレクション現象を利用して当該細菌を活性汚泥から排除し、従来の技術では達成が不可能であった下水濃度レベルの希薄窒素排水で亜硝酸型硝化を実現する。これは亜硝酸酸化細菌を特異的に死滅させるメタボリックセレクタを活性汚泥プロセスに設けるもので、原水の低濃度窒素成分が安定的に亜硝酸塩として処理水に排出される。最終的な新システムは、これと平行して設置する硝化抑制型(易メタン発酵性余剰汚泥排出型)の活性汚泥プロセスで原水の低濃度窒素をアンモニア態窒素のままで排出させ、これら2種類の処理水を混合してアナッモクス細菌のリアクタに通水して脱窒するものである。 下水濃度レベルの希薄窒素を含有する合成排水を用いた一連の実験結果をもとに、数理モデルを持ちいて亜硝酸酸化細菌の抑制が発生する運転転領域を把握した。これによれば、メタボリックセレクタや活性汚泥プロセスの運転次第でアンモニア酸化細菌の増殖も抑制されてしまうケースがあることが示された。活性汚泥プロセスからの余剰汚泥の引き抜き、メタボリックセレクタの汚泥滞留時間ならびに活性汚泥プロセスとメタボリックセレクタの汚泥内部循環の3因子を最適化することで、連続実験で処理水のアンモニア態窒素:亜硝酸態窒素をアナモックス反応で理想的なほぼ40:60の比率にすることができた。この性能は運転を止めるまでの150日間に亘って継続した。本年度はこの連続実験を継続し、メタボリックセレクタを設けた実験系や従来の完全硝化型実験系と微生物叢を比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公開されている亜硝酸酸化細菌の遺伝子バンク情報がアンモニア酸化細菌よりもやや限られているため、微生物叢の動態をやや簡略化して解析する必要がある。また、実験結果で得られた従属栄養細菌の死滅反応は文献値よりもやや多いため、この微生物叢の動態も解析し、文献データと比較する。
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今後の研究の推進方策 |
開発中のシステムは、アンモニア酸化細菌・亜硝酸酸化細菌・従属栄養細菌の3者が亜硝酸の消長に関わるもので、たいへん複雑な構造を有している。しかも、運転条件(微生物の滞留時間)によって微生物叢が遷移し、毒性への感受性(動力学)が変わるようである。この立式化がシステム特性の把握に役立つはずなので、研究分担者が解析する「生細菌の叢遷移」データをもとに複数種の動態を計算するアルゴリズムを開発する。最終年度の本年は、生細菌の叢遷移モデルの開発に特に注力する。
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