研究課題/領域番号 |
22H01642
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
孫 玉平 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00243915)
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研究分担者 |
藤永 隆 神戸大学, 都市安全研究センター, 准教授 (10304130)
竹内 崇 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (80624395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PCaRC柱 / ドリフト硬化性 / レジリエンス / 残留変形角 / 薄肉円形鋼板 / 拘束 |
研究実績の概要 |
付着強度の低い、より太径のウルボン筋(U15)超高強度ウルボン筋を正方形状に配置したPCaRC円形断面柱の耐震性能および修復性能を実験的に調べるために、ウルボン筋の端部定着長さ(20d)と柱のせん断スパン比(1.7)を一定として、柱に作用する軸力の大きさ(軸力比が0.20と0.33)、円形薄肉鋼板による拘束の有無、および柱の製作方法(一体打ちとプレキャスト)を実験変数に取り、ウルボン筋を用いたRC造プレキャスト円形柱と一体打ち柱を計8体を製作し、それらの試験体に対して一定軸力下における繰り返し曲げせん断実験を行った結果、以下の知見が得られた。 1)薄肉円形鋼管による横拘束とウルボン筋を主筋として用いれば、レジリエンスのきわめて高いプレキャストRC造柱の創出が可能である。 2)薄肉円形鋼管で拘束されたPCaRC造柱は、軸力比が0.33と比較的高い軸力下においても、一体打ちのRC柱と同様に、部材角6.0%まで高いドリフト硬化性(耐力が水平変位の増加に伴い上昇し続ける特性)を示せると同時に、部材角4.0%までの載荷を経験した後の残留部材角は最大経験部材角の1.5/10まで小さく抑制できる。 3)円形鋼管による拘束を施されていないPCaRC柱は部材角3.0%前後から、かぶりコンクリートの剥落と進展に伴って、耐力が低下し始めたが、低下勾配は比較的緩やかであった。 4)ウルボン筋を断面内において正方形状に配置し、薄肉鋼板で拘束した円形PCaRC柱の履歴性能を評価するため、前年度で開発した解析手法を用いれば、本提案PCaRC柱の履歴性状を大変形域まで比較的精度よく評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発するウルボン筋を断面内において正方形状に配置した円形PCaRC柱の目標性能は、部材角が1/25(4.0%)になるまでのドリフト硬化性を有することと、部材角1/25(4.0%)からの除荷後残留部材角は1/200(0.5%)以下に抑制できることの二項目である。それらの性能を検証するために、実験研究においては、本提案柱のかなめであるウルボン筋の端部定着長さを始め、柱のせん断スパン比、柱の製作方法(プレキャストと一体打ち)、および加える軸力のレベル(軸力比)を実験変数に取り、円形PCaRC柱の高ドリフト硬化性と高修復性の実証と、ウルボン筋の端部定着長さの影響に関する基礎データの取得を2022年度の研究内容として計画した。2023年度の実績報告書の概要から分かるように、1)端部でアンカー定着を施したPCaRC柱は、その埋め込み深さを鉄筋呼び名径の20倍程度とすれば、前年度で使ったU12.6ウルボン筋よりも太径のU15ウルボン筋を用いても、部材角6.0%まで一体打ち柱と同等なレジリエンス性を有することと、2)本提案円形プレキャスト柱は、薄肉円形鋼管の強力な横拘束を受けて、軸力比が0.33と比較的高い軸力下においても、部材角4.0%から除荷後の残留部材角が0.5%程度に抑制できること等が判明された。これらの知見から、本提案円形PCaRC柱は当初予想したドリフト硬化性と修復性を達成できたことが判断できる。また、OpenSEEsを用いて、本提案柱を用いたピロティ構造の地震動応答解析を行い、本柱を用いたピロティ構造は非常に優れた復元性を有することと、本柱を用いればピロティ構造の設計上のクリティカル箇所はピロティ層から上層壁脚に転換させることが可能であることを明らかにした。 上記の考察から、本研究は概ね順調に進展しているとの判断に至った次第である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度と2023年度の実験研究はほぼ当初予定通りの成果が得られたことを踏まえ、2024年では、当初計画した通り、1)繰り返し載荷の形式(片持ち柱、双曲率変形柱)が提案柱のドリフト硬化性と修復性(残留変形)に及ぼす影響に関する基礎データの取得、2)柱の拘束形式(薄肉鋼板と通常帯筋)による影響に関する継続的検討、3)本提案円形PCaRC柱の繰り返し履歴性能の解析手法のさらなる精度検証、4)円形PCaRC柱の能力曲線(水平力―部材角関係)と修復性曲線モデルの構築を研究対象とする。 具体的には1)薄肉円形鋼管の有無と軸力比を主要な実験変数として、せん断スパン比1.7の片持ち柱と双曲率変形柱をそれぞれ4体(計8体)を作成、一定軸力下における繰り返し載荷実験を行い、関連因子による影響に関する基礎データの取得を図る。2)2022年度開発した、ウルボン筋の付着すべりの特性を考慮できる履歴挙動を解析する手法は本年度の実験結果との比較を行い、その精度検証を行う。必要であれば、解析手法のキャリブレーションを行う。3)キャリブレーションされた解析手法を用いて、アンカー定着されたウルボン筋の配筋量、柱のせん断スパン比、軸力比、およびコンクリートへの拘束形式(帯筋拘束と鋼板拘束)をパラメータに、提案柱の履歴挙動に関する数値シミュレーションを行う。
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