研究課題/領域番号 |
22H01664
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安福 健祐 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (20452386)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 群集誘導 / ヒューマンインザループ / デジタルツイン |
研究実績の概要 |
スポーツやコンサートなど幅広い用途で利用される集客施設周辺環境のデジタルツインを構築し、施設周辺の人流データをリアルタイムで取得しながら大規模群集誘導シミュレーションへの適用が可能なフレームワークを開発し、以下の結果を得た。 施設のステークホルダーや警備員が、実際の経験と照らし合わせながら群集の安全性・効率性を評価できるように、都市空間を視覚的に再現したアーバンメッシュをデジタルツイン上でリアルタイムに可視化した。デジタルツイン上でマルチエージェントシステムによる群集シミュレーションを行うため、歩行者エージェントが通行可能なエリア形状をナビゲーションメッシュとして構築した。 ナビゲーションメッシュは、施設周辺約10,300平方メートルの広範囲のエリアをタブレット端末に搭載されたLiDARセンサーとアプリケーションソフトウェアを活用して3Dスキャンし、変換した3Dメッシュの測定精度を現地調査の一部実測調査結果と比較することで、高い精度が得られることを確認した。 また、デジタルツイン上で歩行者エージェントの動きにフォーカスして可視化するためのX線ビューモードを実装し、群集性状の直感的な理解を促した。さらに、人流データの時系列グラフを画面に半透明でオーバーレイすることで、定量的にもデータを確認できるシステムとした。 デジタルツインは施設の群集管理システムにアクセスし、リアルタイムに人流データを取得することで、物理空間に対応したデジタルツイン上の検知線位置から歩行者エージェントを発生させて、リアルタイム性の高い群集シミュレーションが可能なフレームワークを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、デジタルツインを活用して、群集誘導シミュレーションに必要となる人流データを現実空間から入力することができる仮想実験環境を構築することを目標としており、今年度の研究実績から、実在する集客施設周辺環境のデジタルツインを構築して、リアルタイムで人流データを取得しながら群集シミュレーションに入力が可能なフレームワークを開発ができており、その目標はほぼ達成された。 次の段階としては、デジタルツインを活用した大規模群集誘導シミュレーションの最適化において、ステークホルダーの評価を導入するヒューマンインザループを適用することを目標としており、今年度の研究実績においても、施設のステークホルダーや警備員が実際の経験と照らし合わせながら群集の安全性・効率性を評価できるように、デジタルツイン上で視覚的にフォトリアルに再現された空間の可視化機能が実装されている。また、マルチエージェントシステムによる群集シミュレーションにリアルタイムの人流データを入力できる仕組みによって、2023年度に取り組む研究開発の事前準備ができたといえる。 本研究の最終的な目標は、実在する大規模施設を対象にしたデジタルツイン上での大規模群集誘導の実証実験を行うことであり、今年度の研究実績から、施設のデジタルツインが群集管理システムにアクセスし、リアルタイムに人流データを取得できるフレームワークは構築できた。これにより、実証実験に向けた準備も一部進んでいるといえる。 以上より、本研究では2022年度の目標は達成されており、次のステップや最終目標に向けた準備も整いつつあることから、概ね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度はヒューマンインザループを活用した群集誘導の最適化に焦点を当て、具体的な実装や評価方法を明確にしていくことが重要となる。例えば、シミュレーション環境内でステークホルダーや警備員が実際に介入できるインターフェースを開発し、彼らの意思決定がシミュレーションにどのように影響するかを評価する手法を確立する必要がある。また、最終的な目標である実在する大規模施設を対象にしたデジタルツイン上での大規模群集誘導の実証実験に向けて、具体的な計画を立てる必要がある。それには、実験シナリオの設定、ヒューマンインザループに組み入れる参加者の選定、データ収集方法、評価指標の選定などが含まれている。まずは仮想空間実験の予備実験を実施して、計画の妥当性、システムの適用性を評価することからはじめる。 一方で、入力する人流データに関するデータの精度は、的確な群集誘導を行うために非常に重要となる。既存のデータ収集方法に加え、新たなデータ収集手法や技術の導入を検討し、データの質と量を向上させる。また、収集されたデータを効果的に分析し、シミュレーションや最適化アルゴリズムにフィードバックすることで、より現実に近い群集誘導方法を提案できるようにする。 また、現在、別の共同研究として取り組んでいるJST未来社会創造事業本格研究課題「個人及びグループの属性に適応する群集制御」における学際的な研究グループにおいて、研究成果を共有し、フィードバックを受け取ることができる。最終的に本研究成果が社会実装されることを視野に入れ、共同研究企業との連携やシステムの導入、運用についても検討する。
|