研究課題/領域番号 |
22H01669
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
有賀 隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60303658)
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研究分担者 |
佐々木 葉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00220351)
岡本 肇 中部大学, 工学部, 准教授 (50513355)
松浦 健治郎 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20335144)
小松 萌 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80822139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | まちづくり庭園 / 都市生態システム / アグリフィールド / シェア型環境マネジメント / 地域まちづくり事業制度 |
研究実績の概要 |
本研究は研究代表者・有賀隆が全体を総括し、研究分担者である佐々木葉、岡本肇、松浦健治郎、小松萌の4名が地方中核都市、中部圏、首都圏のフィールドごとの研究幹事を担当して、3大学の研究拠点間の緊密な連携により実施している。 新潟県新潟市のフィールド(幹事:佐々木)では、都市の近郊に存在する湿地の環境維持に直接的に関わる農業用水路の複雑なネットワークをGISによって可視した。これによって低平地の農地の営農のための水管理と、貴重な自然環境資源である福島潟での環境体験活動との関連を広く地域で意識していくための基礎資料を提示することができた。 名古屋市中川区のフィールド(幹事:岡本)では、生産緑地法改正にあたる1991年時点で土地区画整理が完了している農地を対象に、名古屋市緑被地GISデータを活用し、現在までの農地保全と減少の種類別実態を統合型GISデータベース構築のための基礎情報として整理した。 三重県四日市市のフィールド(幹事:有賀・小松)では、市民緑地や市民農園の実測及び周辺地域の現地調査を実施し、まちづくり庭園を基盤とする地域環境の構成原理の実態を明らかにした。そして、これらの調査分析結果から、主としてまちづくり庭園と周辺地域との立地関係に基づいて地域を類型化することで、統合型GISデータベースの構築のための基礎情報を整理した。 首都圏のフィールド(幹事:松浦)では、公共空間と民有空き地を農空間として利活用している事例の調査研究に取り組んだ。公共空間については、渋谷区玉川上水旧水路緑道を利用した仮設FARMを対象として、関係者へのヒアリング調査・現地実測調査・市民利用者へのアンケート調査により、農的空間の実現手法及び空間特性を解明した。 これらの調査を通してアグリフィールドの保全・再生・利活用の活動実態やその担い手組織、行政支援を含む社会的仕組みの実態を明らかにした(全体:有賀)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、緑地・湿地・水系・都市農地(農空間)・空地(低未利用地)など従来縦割的に計画対象とされてきた空間を「アグリフィールド」と定義して包括的かつスケーラブルに捉え、その特性を生態システムの実態と管理・利活用の両側面から分析し明らかにすることを目的の一つとした。これを踏まえ、アグリフィールドの計画デザインの実践に重要な事項である、地域住民をはじめとするステイクホルダーが抱く地域イメージにおいて、農に関わるインフラや土地の特徴を明快に描けること、を視点の一つとして各フィールドでの調査分析を実施した。 新潟市における地図分析をベースとした農と関わる地域特性の可視化は、そのために有効な情報を提供することができたと考えられる。名古屋市中川区の農地を対象とした調査分析では、どの農地も第一種低層住居専用地域が残存しやすいが、他の空間的条件は農地が立地する用途地域によって異なることを明らかにすることができ、計画予定の通り進捗した。三重県四日市市のアグリフィールドを対象とした現況調査及び分析については当初の計画通りに進捗し、統合型GISデータベースの構築のための基礎情報を整理することができた。また、現地調査では当初の計画よりも多くの管理者や利用者へのヒアリング調査を実施することができた。そのため、得られた結果から、アグリフィールドの定性的分析および評価のための指標を仮説的に設定することができた。首都圏の公共空間(緑道)、民有空き地という異なるアグリフィールドの先進事例分析では、管理者、利用者等へのヒアリング調査、日照シミュレーション等により、その整備プロセス、利用者の誘致圏、春分・夏至・冬至の日照時間、防災空地としての避難時の誘致圏などを解明し、多主体協働によるシェア型環境マネジメントの詳細を明らかにすることができた。 これらを踏まえ、本年度の進捗状況は研究実施計画に即し順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
多様なタイプのアグリフィールドを対象とする生態システムの変容に関する調査及び分析については、収集した調査資料を用いて現在も分析を進行中であり、この分析結果についてデータベースに反映させるとともに、統合型GISデータベースの構築を行う予定である。またまちづくり庭園を基盤とする地域環境の構成原理から定量的指標を設定した上で、定量的・定性的指標を用いて地域類型に応じた事業手法・社会的制度を検討する。初年度に実施した、地図分析を基本とする地域イメージの可視化結果を活用することで、関係主体が農に関わる活動への意識をどのように変化させていくかについての調査分析を実践的に進めていく予定である。そのため土地条件以外の社会的情報をGISデータベースに追加し、特に重要となる翠点の抽出方法を検討する。また対象とする多様なアグリフィールドの空間的条件と住民評価の相関関係を明らかにしていく。このため自治体に加え様々な管理者や利用者などに対してヒアリング・アンケート調査を実施するとともに、研究対象としている民有地、公共空間(公園・歩道)のアグリフィールドの中から適地を候補として剪定した上で、エディブルパーク・エディブルストリートなどのステークホルダー参加型の社会実験を、多主体協働によるシェア型環境マネジメントにより実施し、その効果検証を通してシェア型環境マネジメントを地域事業として進める社会制度ための論点を整理、分析、考察することを予定している。
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