研究課題/領域番号 |
22H01677
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小笠原 俊夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20344244)
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研究分担者 |
青木 隆平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00202466)
熊澤 寿 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (20344252)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CFRP / 極低温 / マイクロメカニクス / 力学特性 / 水素 |
研究実績の概要 |
成形温度との温度差に起因する顕著な熱残留応力と、樹脂及び繊維/樹脂界面の低温脆化の影響で、CFRP積層板は極低温において低ひずみ域(0.5%以下)から微視的損傷が発生/進展する。ミクロスケールでのCFRPの数値解析は、微視的損傷の発生・進展の再現と予測に有効であるが、極低温において実証された微視力学モデルは未だに構築されていない。本研究では、極低温(20~ 200 K)におけるCFRP積層板の損傷進展解析を行うための微視力学モデルを構築することを目的とする。 極低温における微視的損傷進展をin-situで観察手法を確立するため、冷凍機を備えた小型材料試験機の設計・製作を進めた。試験系の断熱と結露防止のため、負荷試験治具およびサンプルを真空チャンバー内に設置し、冷凍機からの熱伝導によってサンプルを冷却する方式とした。真空チャンバー上部の覗き窓からサンプル評定部を長焦点のデジタル顕微鏡で観察することによって、CFRPの微視的損傷をin-situでミクロ観察可能な実験システムを設計し、装置の製作に着手した。 極低温における微視的損傷進展およびHeガス漏洩挙動の評価として、冷凍機を備えた大型の二軸材料試験機を用いてCFRP積層板の十字型試験片に対して二軸引張り試験を実施した。その結果、極低温では微視的損傷進展が顕著となること、Heガス漏洩挙動は薄層の積層構成には大きく影響しないことがわかった。また、CFRP積層板の微視的損傷進展をリアルタイムで評価することを目的として、埋め込み型光ファイバセンサ(光周波数領域リフレクトメトリ型FBG)の適用可能性について検討し、マトリクスき裂の検出が可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄層CFRPの微視的損傷進展と気体漏洩の実験による評価については、予定通り実験および評価が進捗している。FBGセンサによる微視的損傷進展評価については、想定よりも早く実現可能性の検証が進んでいる。 極低温小型材料試験機の開発では、機構部品、半導体、計測機器が当初の見込みに対して長納期となっており、4ヶ月程度の遅れが生じている。ただし、すでに必要な部品等は納入されているため、研究全体に対する影響は大きくはないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
極低温におけるミクロ領域でのin-situ観察手法を確立するため、冷凍機を備えた小型材料試験機の開発を引き続き進める。真空チャンバー外から、サンプル評定部をデジタル顕微鏡によって詳細に観察するための実験手法を確立する。CFRP積層板から微小引張り試験片を作製し、開発した小型材料試験機を使用して室温~極低温(~50K)における引張り試験中の微視的な変形・損傷のin-situ観察を行う。得られた観察結果(画像)から微小部デジタル画像相関法(μ-DIC法)によってCFRPの微小領域におけるひずみ分布を取得する。 逆解析によるCFRP中の母材樹脂および界面力学特性の同定手法の検討として、in-situミクロ観察結果から、母材樹脂および繊維/樹脂界面力学特性を同定する手法について検討を開始する。強度試験中にCFRPのin-situミクロ観察画像を撮影し、μ-DIC法によって、樹脂および繊維のひずみ分布を計測するとともに、実験結果から樹脂特性を推定するための逆解析アルゴリズムについて検討する。 また、薄層CFRP積層板の十字試験片を対象とし、二軸引張り試験によって微視的損傷進展とHeガス漏洩の関係について実験による評価を行う。微視的損傷進展をリアルタイムで評価する方法として、OFDR-FBGの適用可能性についても引き続き検討を進める。
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