研究課題
超低軌道衛星の定常運用を行うためには衛星の低抵抗化が重要な設計ポイントとなる。超低軌道環境での大気分子流れは分子流~中間流領域であることから、超低軌道衛星の低抵抗化には航空機とは全く異なる超熱速度希薄流体力学の適用が必要となる。本研究では、レーザーデトネーション現象を用いた地球高層大気地上実験技術により超低高度衛星実用化の鍵となる衛星表面における分子散乱ダイナミクスの実験的研究とロケット実験、さらにはDSMCによるシミュレーションを通して、低抵抗衛星設計を行うための基盤技術である材料選択・数値計算・設計技術の獲得を目指すとともに、表面物理学や数値計算分野への理学的貢献を行うことを目的とするものである。FY2022年度にはデジタル計測システム用センサーの基本設計と製作を行った。予期せぬレーザーの不調により、超熱速度域での実験を行うことができなかったが、新規開発のデジタル計測システム用センサーは分子ビームを検出できることを確認できた。また、これまでの超熱速度域での実験結果をもとに散乱分布を再現するためのDSMCコードの作成を行った。ロケット実験に関しては、詳細設計を完了し、フライトモデルの製作を行いつつある。
3: やや遅れている
研究初年度のFY2022には、レーザーノイズを低減するための地上実験装置系の改造と、準備に時間のかかる観測ロケット実験の準備を主として行った。地上装置の改造としては、過去の科学研究費のご支援で申請者が開発した小型表面散乱分布検出装置付きレーザーデトネーション装置の問題点(短い飛行距離に起因する低い時間分解能・角度分解能の不足やアナログシステムゆえの感度不足、レーザープラズマノイズによる計測デッドタイムの存在)を根本的に解決するため、散乱分布計測システムをデジタル化し、パルスカウント方式により耐ノイズ特性を向上させるためのセンサーの製作と基礎設計を行った。試作したセンサーは電子衝撃イオン源を有する分子カウントシステムであり、熱速度の分子線の検出が可能出ることが確認された。しかしながら予期せぬレーザーの不調により、超熱速度域での実験に移行することはFY2023年度に順延された。レーザー発振に起因するノイズの低減化対策の目処が立った時点で真空チャンバーの大型化により飛行距離を延長し、時間分解能・角度分解能の向上を図る予定である。一方、観測ロケット実験ではS-310ロケットの大気密度計測センサーに分子散乱分布を利用して圧縮を図る特殊インテークを装着し、DSMC計算結果と整合性を検証するための検証システム開発を行った。現在は基礎検討を終了し、詳細設計と製作を実施つつある。DSMCコードへのCLLモデルの実装についてはほぼ終了した。
レーザー不調については、海外からの技術サポートを2023年5月に受ける予定であり、レーザー性能回復後に超熱ビームの検出実験と、レーザー発振に起因するノイズの低減化対策の効果を検証する予定である。ノイズ問題解決の目処が立った時点で真空チャンバーの大型化により飛行距離を延長し、時間分解能・角度分解能の向上を図る基本設計に入る予定である。ロケット搭載部品についてはJAXA観測ロケットグループと緊密に連絡を取りながら詳細設計と製作を進め、FY2023年度末までに計器合わせ試験に進めるように着実に進展させる。CLLモデルを用いたDSMC計算については、ほぼコード実装が終了していることから、引き続き種々の条件で計算を進めて、Maxwellモデルとの定量的な比較を行う予定である。
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