研究課題
本研究では世界初となるテレメトリデータからの遮蔽効果解析を行うとともに、本グループが保有する超低軌道宇宙環境地上試験技術(世界唯一)をリンクさせることにより、今後益々重要になる低軌道宇宙材料曝露試験方法論と、高精度データ解析手法を確立することを目標としたものである。研究初年度であるFY2022はテレメトリデータの再解析による構体遮蔽効果の確認と、地上試験による再現実験の準備を行った。まず高度200kmにおける世界初の超低軌道材料曝露試験であるSLATS/AOFSならびにSLATS/MDMのテレメトリデータとSLATSの環境・フライトデータをリンクさせることにより、構体遮蔽効果について3分間隔でのリアルタイム解析を行った。このデータを基に構体遮蔽効果について補正モデルを構築し、AOFSセンサーの補正に適用した。この構体遮蔽効果は材料曝露試験のみならず、観測ロケットなど短期間のミッションで行われる大気密度計測にとっても重要な誤差要因となりうることから、FY2024に予定されているS-310観測ロケットを用いた大気密度計測において、遮蔽効果を考慮した高精度観測を実現するためのプローブ搭載位置や計測方法に関する検討を実施した。
3: やや遅れている
本研究の初年度に当たるFY2022には、テレメトリデータの再解析による構体遮蔽効果の確認と、地上試験による再現実験の準備を行った。まず高度200kmにおける世界初の超低軌道材料曝露試験であるSLATS/AOFSならびにSLATS/MDMのテレメトリデータとSLATSの環境・フライトデータをリンクさせることにより、構体遮蔽効果について3分間隔でのリアルタイム解析を行った。SLATSが単純な箱型衛星形状である事と、遮蔽効果が異なる機体の2か所にAOFSセンサーが設置されていることを利用したものである。解析の結果、AOFS-H5とAOFS-H7のデータは機体ピッチ角に比例した特性を発現することを見出した。これは材料劣化現象に原子状酸素の熱運動を考慮する必要がある事を示しているものである。これにより構体遮蔽効果について補正モデルを構築し、AOFSセンサーの補正に適用した。構体遮蔽効果は材料曝露試験のみならず、観測ロケットなど短期間のミッションで行われる大気密度計測にとっても重要な誤差要因となりうることから、FY2024に予定されているS-310観測ロケットを用いた大気密度計測において、遮蔽効果を考慮した高精度観測を実現するためのプローブ搭載位置や計測方法に関する検討を実施した。当初の予定ではFY2022年度内に搭載機器の詳細設計まで実施する予定であったが、搭載機器が高精度・大型化し、観測ロケットの観測機器搭載部の包絡域内に収まりきらないことが判明した。現在、JAXA観測ロケットグループと成立性のある搭載方法に関して協議を行ている。
AOFSのテレメトリデータ解析による構体遮蔽効果に関しては、NM-Y姿勢に適用可能な補正モデルを確立することができたので、FY2023年度は本モデルをSPM姿勢にも適用し、その精度検証を行う予定である。また、希薄流体シミュレーションであるDSMCを用いてSLATS構体下面での分子反射の効果について解析する予定である。これらの解析により本研究で確立した遮蔽効果補正方法について適用限界を明らかにし、将来の高精度軌道上材料劣化試験方法の確立に資する。FY2024に予定されているS-310-46号機を用いた大気密度計測ミッションについては、早急に観測機器の詳細設計を終了し、搭載機器の製作に移行する。これに並行してDSMCを用いたフライトモデルの計測特性把握、センサーのアウトガス対策等についての地上試験を実施する予定である。
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http://www.space-environmental-effect.jp/index.html