研究課題/領域番号 |
22H01687
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
菊地 翔太 国立天文台, RISE月惑星探査プロジェクト, 助教 (90830068)
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研究分担者 |
三桝 裕也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究開発員 (90611707)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小惑星探査 / 高速自転天体 / 軌道力学 / 重力場 / 画像航法 |
研究実績の概要 |
2022年度は高速自転小惑星近傍での探査機の軌道力学と自律航法の研究を行った。 軌道計算を行うにあたり、初めに高速自転小惑星の周囲に形成される特異な力学環境についての解析を行った。具体的には、小惑星1998 KY26を例にとり、小惑星重力・太陽輻射圧・太陽潮汐力による複合的な加速度が、距離に応じてどのように変化するかを評価した。これにより、太陽輻射圧と自転遠心力の影響がこれまで探査された小惑星より極めて大きいことを明らかにした。また、構築した力学モデルに基づき、探査機はやぶさ2が小惑星近傍に留まるためのホバリング軌道・周回軌道・降下軌道などを求めた。この結果、リュウグウでの探査手法を応用することで、高速自転小惑星での探査機運用が実現可能であることがわかった。 加えて、表面での遠心力が重力を上回る高速自転小惑星では、人工マーカーによる航法が成立しないため、自律的な地形照合航法の研究を進めた。具体的には、小惑星リュウグウの実画像を用いて、はやぶさ2に実際に搭載されているオンボード画像処理機能に基づく地形照合航法の性能を評価した。小惑星リュウグウ表面の特徴点をテンプレート画像として読み込み、それと同じ物体位置をリュウグウ表面の実画像から判定することができた。一方、その特徴点をどの段階で撮像した画像を用いて抽出するのか、といった実用上のシナリオ検討、高度が変化した場合のマッチングの対応可能性などについて、実運用での実装に向けた今後の研究課題が浮き彫りとなった。 これらの成果は未踏の高速自転小惑星の探査を実現するための基盤となる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、高速小惑星近傍での探査機軌道計算の手法を2022年度中に確立することが目標だった。実際に探査機に作用する外力のモデル化、およびそれに基づく軌道運動のモデル化を完了した。加えて、自律画像航法の研究に関しても、リュウグウの実画像を用いた、はやぶさ2のオンボード画像処理機能の実験を計画通りに行うことができた。以上より、本研究課題は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高速自転小惑星近傍での物体の軌道運動と探査機の誘導航法について、2022年度の研究成果を踏まえた詳細化を行う。 2022年度における軌道計算の結果、外乱の強い高速自転小惑星の近傍では、探査機軌道の摂動が極めて大きいことが分かった。今後は、このような特殊な力学環境下でも安定的に探査機軌道を維持し得る滞在手法を明らかにする。具体的には、摂動の影響が小さくなるような太陽-小惑星-探査機の幾何関係を明らかにしていく。この際、軌道維持を実現するための誘導航法も含めた議論を行う。加えて、探査機から投下する人工マーカーや、弾丸射出により放出される小惑星粒子など探査機以外の物体についても、特異な力学系における軌道運動の計算を行い、はやぶさ2拡張ミッションにおける探査運用指針の確立を目指す。 また、2022年度の誘導航法の研究では、はやぶさ2に実際に搭載されているオンボード地形照合画像処理の機能・性能を小惑星リュウグウの実画像を用いて評価した。この評価結果を基に改善点を洗い出し、2023年度には自律地形照合機能の拡張性について研究を進める。実機に適したより高度でロバストな地形照合アルゴリズムを開発することで、はやぶさ2オンボードへの実装を目指す。 研究代表者と研究分担者を中心とする研究会にて本課題を推進するとともに、学会や投稿論文を通じて段階的な研究成果の発表を目指す。
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