研究課題/領域番号 |
22H01702
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
箕浦 宗彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (30294044)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 実海域性能 / 経年劣化モデル / モニタリングデータ / 逐次最小二乗法 / 多変量カーネル関数 |
研究実績の概要 |
代表的な海象条件(正面向不規則波に限定)を複数設定し、向かい風の中で不規則波中模型船の曳航試験を行い、運動特性と抵抗増加量およびその結果から出力特性を求めた。船速は低速域から高速域まで系統的に変化させた。向かい風は模型船前方の曳航台車に取り付けた大型ファンで与えた。試験は大阪大学船舶海洋試験水槽(長さ100m、幅7.8m、深さ4.5m)で行った。模型船はRIOSコンテナー船とRIOSバルク船の2種類を予定していたが、初めにコンテナー船で実験をしたところ、想定していた結果が得られなかったため、バルク船の実験は取りやめた。想定していた結果が得られなかった理由は、模型試験における実運航の多様性と不確実性の再現の難しさにある。しかし、波や風の不確実性に関するデータは参考として取得できたので、これは次年度の研究に利用する。一方、軸出力の性能劣化モデルの基礎的な数式を、劣化の仕組みを考慮して組み立て、逐次最小二乗法と組み合わすことで、経年劣化を有する軸出力データ(モニタリングデータ)の要因分析手法を構築した。この成果は次年度の国際会議(ISOPE2024)等で発表の予定である。また、この数学モデルの構築の過程で、昨年度までに用いた性能劣化を含まない統計モデルにプロペラ回転数(主機回転数)のデータを含めることで、大幅に解析精度が向上できることが明らかになった。この成果は国際会議AMEC2023で発表した。さらに、関連研究として、斜波中の波浪中抵抗増加の問題に関して、波高の2乗量に対する非線形性(線形理論に従えば、波浪中抵抗増加は波高の2乗量に対して線形)をCFDと確率理論を組み合わせて推定し、その成果を国際会議ISOPE2023で発表した。これは、軸出力の波浪中抵抗増加に起因する成分の考察に参考となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
模型試験における実運航の多様性と不確実性の再現の難しさから、実験データの取得が不十分となった。多様性は運航方法(船速、喫水、トリムなど)、自然環境の外乱(波、風など)があり、さらに、外乱等の不確実性が考えられる。開発した統計モデルの検証を如何に行うかが問題であるが、その一つの解答として、実験データから得られた多様性と不確実性を性能シミュレーションに取り入れて、実船モニタリングデータと同等の特性を有するミュレーションデータ(擬似モニタリングデータ)を生成することが目的である。波や風の不確実性に関するデータは十分ではないが取得できたので、これは次年度の研究に生かしたい。
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今後の研究の推進方策 |
軸出力を要因ごとに計測するのは物理的に不可能である。模型実験ではそれが可能であるが、統計解析に必要な多様性と不確実性を有するデータを模型試験で収集するのは現実的ではないことが分かった。実際の運航船のモニタリングデータを別の方法で処理した結果と比較することは検証法の一つであるが、軸出力を要因ごとに分解できる手法はいまだ確立されていない。すなわち、検証のためには要因ごとの正解データが必要であるが、信頼できる正解データがないというのが現状である。今後は、模擬モニタリングデータに、本年度に得た実験データを参考に各種の不確実性、例えば、船体応答を求める数理モデルの不確実性、運航条件や海象条件の不確実性、モニタリング機器等の不確実性を加え、さらに、軸系の性能劣化を加えて検証を進め、その成果をまとめる。
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