研究課題/領域番号 |
22H01704
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田島 博士 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70179688)
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研究分担者 |
鶴 大輔 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (10614620)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アンモニア / 舶用機関 / 直接噴射 / 定容容器 / 脱炭素化 / 成層燃焼 |
研究実績の概要 |
本研究は,舶用機関の大きなS/B比とブローダウン時排気の筒内再導入を活用して,混合気の軸方向成層化を実現し,シリンダ下方の主燃焼空間ではNH3の希薄予混合燃焼,シリンダ上方の副燃焼空間では高温・低酸素濃度雰囲気下でのNH3を主とするHCCI燃焼という異種の燃焼を組み合わせることで,高熱効率と低排出物化を維持したまま航行時のCO2排出ゼロの実現に寄与できる舶用推進主機を実現することを目的としている. 平成4年度は,アンモニア噴霧燃焼の基本特性を把握するため,定容容器内のアンモニア噴霧の発達過程の可視化計測および数値予測から研究に着手している. 定容容器内の噴霧発達過程の可視化計測については,高圧で常温ないし高温の空気中で舶用機関相当の噴射圧で液相アンモニアを噴射し,その先端到達距離を調査した.高温雰囲気条件では,軽油噴霧の近接パイロット噴射によるアンモニア噴霧への強制着火と助燃効果を調査した.PLIFによるアンモニア-空気予混合火炎中のNO生成過程の可視化観察については,予算の適正使用に鑑み,配備可能なPLIFシステムについて追調査を行い,既存設備を転用可能なことから当初計画のとおり西華DI社製システムを選定している. 次に,数値予測に関しては,KIVA-3V+CHEMKINに中村らのアンモニア酸化反応の詳細反応スキームを実装して,定容容器内の噴霧発達過程と燃焼過程を数値予測し,上記計測結果と比較した.本手法は,次年度以降で使用単流掃気模擬装置(UFSM)や急速圧縮膨張装置(RCEM)における現象予測に使用するCONVERGEにも適用可能である. また,最終年度に実施予定のRCEMを用いた燃焼実験に先行する試みとして,アンモニアの直接噴射拡散燃焼と吸気管内噴射予混合燃焼をRCEMに適用し,その基本的な燃焼特性を筒内圧経過の解析と排出物の計測を通じて把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で言及した各実施項目について進捗状況を説明する. 定容容器内のアンモニア噴霧の発達過程の可視化計測では,アンモニア噴射弁と軽油噴射弁を近接配置し,雰囲気温度を室温として雰囲気圧,噴射圧,噴孔径を変更し,噴霧先端到達距離に及ぼす影響を調査した.さらに,雰囲気温度を840 K,雰囲気圧を最大5 MPaまで上昇させ,実機での噴霧特性も調査した.その結果,非蒸発条件ではアンモニア噴霧も運動量理論に良好に一致する発達特性を示すこと,雰囲気温度840 Kでは同条件の軽油より噴霧が40%程度伸長することが判明した.また,アンモニア液相噴射の安定化には,燃料配管や噴射弁の冷却が不可欠なことを実証した. 軽油近接パイロット噴射によるアンモニア噴霧への強制着火と助燃効果の調査では,発達した軽油噴霧火炎にアンモニア噴霧を突入させる形式では,アンモニアの消炎効果が現出し,未燃アンモニアの排出が懸念されることがわかった.アンモニア燃焼のNO生成過程のPLIF計測では,西華DI社製システムを早期に選定したものの,ベラルーシ製レーザーやロシア国籍技術者等の問題で納入が令和5年3月まで遅延したため,年度内に計測が開始できなかった. 定容容器内のアンモニア噴霧の発達過程の数値予測に関しては,KIVA-3V+CHEMKINに中村らのアンモニア酸化反応の詳細反応スキームを実装して,定容容器内の噴霧発達過程と燃焼過程を数値予測し,上記計測結果と比較した結果,既存のサブモデルに物性値を反映することでアンモニア噴霧の発達過程が良好に予測できることが判明した.さらに,未燃アンモニアや温室効果が大きいN2Oの排出についても予測可能なことを確認した. また,アンモニアの直接噴射拡散燃焼と吸気管内噴射予混合燃焼をRCEMに適用した結果,それらの基本的な燃焼特性を筒内圧経過の解析と排出物の計測を通じて把握した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進展自体は概ね順調と判断しているが,令和5年度には下記のように研究を推進する計画である. 定容容器におけるアンモニア噴霧発達過程の可視化計測は,世界情勢に関わる不測の事態で遅延したPLIFによるアンモニア燃焼のNO生成過程の計測を除き,ほぼ終了している.PLIF計測に可及的速やかに着手し,年度前半までに定容容器を用いたアンモニア噴霧におけるNO生成域の解明を行う予定である. ブローダウン制御弁(BDCV)については,構想はほぼ完了しており,詳細設計を開始しているが,年度後半にはUFSMに装着して予備的な計測に着手する予定である.なお,予算配分上の都合で可能な範囲で内製化を進める方針である. 数値予測に関しては,筒内流動の予測に最適なCONVERGEにも中村らのアンモニア酸化反応の詳細反応スキームを実装して,成層化燃焼の実現可能性を調査する計画である.既に,アンモニアの熱物性値の影響を的確に反映するための物性値拡張オプションの使用法については把握しており,順次計算を進めていく予定である. なお,初年度である令和4年度は学会発表等の成果公開が不十分であったが,令和5年度には,国際学会での発表と国際ジャーナルへの論文投稿(2編)を行う予定である.
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