研究課題/領域番号 |
22H01706
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
居駒 知樹 日本大学, 理工学部, 教授 (50302625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 浮体式風力発電 / 垂直軸風車 / 可変ピッチ風車 / ムーンプール / 水槽実験 / 翼素運動量理論 / 波漂流力 |
研究実績の概要 |
浮体式風車の基盤浮体にムーンプール型浮体を適用し,その浮体に作用する定常波漂流力特性を調べた。弱非線形仮定でのポテンシャル理論を適用した直接圧力積分法によって推定し,Wave run-upの影響が最も強いことを示した。そのため,浮体外側とムーンプール内の水位変動に影響され,特にムーンプール内の水塊挙動の共振により波漂流力が大きくなったり逆に低減されたりという状態を示すことができた。 垂直軸風車のパワーやスラストを合理的に推定するために,翼素運動量理論に多流管ダブルディスク理論を適用したプログラムを開発した。既存の研究成果との比較からおおよその推定に問題ないことが確認された。なお,流管の数などの予測精度に与える数値実験を試み,流管の分割を小さくし,分割数を増大させることでより滑らかなトルクやスラストの評価が可能になることを示した。 水槽実験用のツイン風車浮体を設計・製作した。風車モデルはモーターによって強制回転させることができる仕様とした。風車はソリディティが0.3程度となるように設計し,かつ可変ピッチ機構を導入するためにサイクロイダル機構を実現するための設計を施した。これを3Dプリンターによりブレード部分を,稼働部分や軸部分については金属加工にて製作した。本研究全体の中では予備実験的な位置づけとなる水槽実験を実施した。一点係留された風車浮体が可変ピッチ風車の回転による推進力の向きの変化によってどのような浮体運動を示すのかについて複数の条件にて実験を行った。ツイン風車のため,2つの風車のピッチの可変幅を変化させたり回転数を変化させたりすることで浮体の移動の違いについて計測した。その結果,設定した風車模型においては浮体を移動させるに十分な推進力を風車回転から得ることができ,また2基の風車の回転数やピッチ角可変幅を変化させることで任意の方向に推進力を発生させられることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度から令和5年度に繰越申請をした上での実績報告となる。そのため,令和4年度に予定していた研究計画のほとんどを繰越により令和5年度の前半で達成することができた。完全に進展していると言えない状況は,CFD計算による可変ピッチ風車のシミュレーションによるタービンパワーやスラスト評価が完了していないためである。プログラムは整備されて試計算は実施できている。引き続き数値実験を実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
水槽実験模型が製作され,可変ピッチタービンによる推進力特性を把握できたことから,次は浮いた状態で風を当てた場合の風向に正対する際の運動特性を水槽実験により把握する。さらに,翼素運動量理論を適用した運動応答シミュレータの精度検証を兼ねた数値実験を実施し,風中で風向に正対する浮体式風車のシミュレーションを実施する。 浮体基盤には継続してムーンプール方式を採用する。ムーンプールがある浮体に働く波強制力や流体力,ならびに運動応答特性の詳細はまだ把握しきれていない。特にムーンプール内の水塊の挙動による非線形応答については実設計においても重要となることから,水槽実験と理論計算の両面から現象の把握を行うと共に,理論的予測が可能な範囲を明らかにする。 大規模実験模型を設計・製作する。最終年度に向けて上記の課題を明確にした後に,大型の実験模型を設計・製作する。また,可変ピッチ風車モデルにサーボモーターによる任意の可変角制御を導入する方法を検討し,新規の風車モデルを開発する。
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