研究課題/領域番号 |
22H01711
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高安 美佐子 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20296776)
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研究分担者 |
尾崎 順一 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (40846739)
志田 洋平 筑波大学, システム情報系, 助教 (80977158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | GPSデータ / 都市圏 / 電気回路モデル / 災害対策シミュレーション / 重力モデル |
研究実績の概要 |
研究費によって購入したポイント型流動人口GPSデータを分析している。研究の内容は大きく分けて二つある。一つ目は、GPSデータを活用した感染者予測モデルの構築と実証、二つ目は、独自に開発した都市圏レベルの人流の電気回路モデルの開発と応用である。 感染者予測モデルに関しては、約100万ユーザーのGPSデータに基づき、各人の行動を15分刻みで在宅、移動、勤務、その他(外食や買い物など)の4つのパターンに自動分類する手法を開発し、それぞれのCOVID-19に伴うイベント期間にどのように行動パターンが変化したかを計測し、それを独自に開発した感染者数の増減の予測モデルにデータ同化する手法を確立した。 電気回路モデルに関しては、都市圏レベルのマクロな人流を記述する独自の数理モデルを開発し、その基盤部分の改良と応用研究を進めている。人流を電流とみなすアナロジーに基づき、データから観測される平面上の人流を近似的に再現するような電気抵抗と電位の空間分布を推定する手法を確立した。推定される電気抵抗の分布は都市交通のインフラによって決まり、マクロな人の流れを生み出すポテンシャル力を特徴づける基本的な量となる。抵抗値の定義を改良することで計算量を大幅に減らすだけでなく、異なる都市や年度での値を直接比較できるような絶対的な値として計算することが可能となった。応用としては、ある地域が事故や災害などで交通インフラが使えなくなった状況を想定してその領域の電気抵抗を非常に大きくし、そのような状況下での任意の2点間の最適経路を計算することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたGPSデータに基づく人流の二つの数理モデル、感染者予測モデルと電気回路モデルの開発は順調に進んでおり、それぞれの成果は昨年度に論文として発表している。今年度は、それぞれの成果を発展させる研究を推進することができた。特に、電気回路モデルの改良に関しては、GPSの人流データから各メッシュでの抵抗値を計算する手法を改良し、計算量をおよそ1万分の1にし、しかも、絶対量として他の都市などの値と直接比較可能な量とすることができるようになった。これらの成果は国内学会、国際学会で報告し、また、学術論文として投稿した。 感染者予測モデルに関しても、GPSデータだけでなく、SNSキーワード出現頻度のデータも併用することによって、人々の「緊張感」や「気の緩み」などの意識の変化を定量化することによって、モデルの改良ができるのではないかと考え、モデルの改良を進めた。この研究に関しても国内外の学会で発表し、論文にまとめる作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
人流の電気回路モデルに関しては、順調に研究が進み、異なる都市の間の抵抗値やポテンシャルの値を比較できるように改良することができたので、今後は、国内の様々な都市間の比較をするとともに、異なるメッシュスケールの比較ができるようにさらにモデルの改良を進める。例えば、1kmメッシュで求めたそれぞれの地点の電気抵抗が得られたときに、2kmメッシュでの抵抗値がどのように計算できるかを検討する。これは、物理学での繰り込みの考えかたにつながるものであり、観測スケールを変える変換公式ができると、大きなスケールでの人流を考えるときには大きなメッシュで計算することで計算量を削減することができるようになる。将来的には、日本国中の人流をこの電気回路モデルによって表現することができるようになり、災害の発生によって交通インフラに障害が生じたときの人流変化のシミュレーションや、また、都市の渋滞問題を解消するための新たな交通インフラの設計などにも応用可能な人流シミュレータの基盤になると期待する。
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