研究課題/領域番号 |
22H01732
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
瀬戸 康雄 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (10154668)
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研究分担者 |
高橋 史樹 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (40754958)
西脇 芳典 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (50632585)
渡邊 慎平 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (60889632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 放射光分析 / 法科学 / 科学捜査 / マイクロイメージング / 違法薬物 / 微細物 |
研究実績の概要 |
放射光フーリエ変換赤外(FT/IR)分光法による薬物粉末混合程度定量化に基づく異同識別法を用いて、覚醒剤メタンフェタミン塩酸塩-カフェインを単純混合やメノー乳鉢粉砕して混合粉末に調製し、SPring-8のBL43IRでマッピング測定(5 μmアパーチャー・2.5 μmステップ)した。IRスペクトル上の特徴的な波数ピークの面積から濃度に変換し、相対濃度値を求め測定領域全体のヒストグラムを作成し、%極端値と分布の標準偏差を識別指標とすることにより、混合程度の差別化が可能であった。 SPring-8のBL36XUで、覚醒剤粉末(押収覚醒剤および合成覚醒剤)中の元素マッピング測定(概ね0.5 μmビーム・照射エネルギー5.5~10.5 keV(元素ごとに設定)、10 μmステップ)および検出された元素のX線吸収微細構造(XANES)解析を行った。試料ごとに、測定元素に応じて分布に違いが見られ(均一分布または局在化)、元素の化学形態を表すXANESプロフィルも違いが見られた。バルクの元素分析による微量元素プロファイリングに基づいた覚醒剤の異同識別においては、汚染と思われる元素の異常定量値が原因でプロファイリングの有効性が損なわれるところ、マイクロイメージング分析情報により汚染の有無を確認することができた。 指紋を各種基板上に押印し、300℃で加熱して、未処理指紋と併せてSPring-8のBL17SUで軟X線分光分析を行った。走査型X線蛍光顕微鏡(概ね0.5 μmビーム・照射エネルギー1.5~2 keV)により数十μmステップマッピングで、シリコン、アルミニウム、真鍮基板上でNa Kaピーク検出を指標として指紋が明確に観察された。また、光電子分光顕微鏡(PEEM)によりすべての基板上で指紋隆線が確認され、1 μm程度のNa粒の集合から隆線が形成されることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、①ラボ分析装置(顕微IR、顕微ラマン、偏光・蛍光顕微鏡、ICP/AES、全反射XRF、SEM-EDX、LC-MS、HPLC)の整備は達成され、新たにレーザー顕微鏡、熱分解GC-Q/TOF、X線顕微鏡を整備した。②FT/IRイメージングに関しては、薬物粉末や覚醒剤粉末の実験はほぼ終了し、論文(掲載)作成中である。③XRFイメージングに関しては、毛髪中薬物や繊維中元素の分布に関する実験はほぼ終了し、論文(掲載)作成中である。④XAFS解析に関しては、毛髪中薬物や繊維中元素の分布に関する実験はほぼ終了し、論文(掲載)作成中である。⑥軟X線分光分析に関しては、対象を毛髪から指紋に変更し、実験は進行中である。⑦X線CTに関しては、SPring-8の課題申請が未採択であり、成果は未達成である。代わりに、当初の計画とは異なるが、ポリエステル繊維を対象とした放射光SAXS、WAXD分析実験はほぼ終了し、論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
追加の実験(放射光、ラボ分析)、データ解析実施、特殊ラボ分析装置の整備により、2023年度計画していて未達成の課題である、覚醒剤粉末の薬物・元素分布解析、指紋の明瞭化技術開発を実施し成果を輩出する。特に、BL17SUの新規SXFM装置を立ち上げ、指紋広範囲の元素イメージング測定による指紋隆線検出法を開発する。また、顕微FT/IT装置にリニア-アレイ検出器と液体窒素連続注入装置を増設し、指紋広範囲のIRイメージング測定による指紋成分の経時変化を観察する。さらに、新たに近接場赤外分光装置を導入して、サブμm領域のIRイメージングによる有機物分布解析法を開発する。
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